monoAI technology(モノアイテクノロジー)は、多人数同時接続可能なビジネス活用形メタバースプラットフォーム「XR CLOUD」を自社開発し、XR関連サービスを展開する会社だ。2022年12月にはメタバース業界初の東証グロース市場への上場を果たしている。
2027年度には2兆円を超える規模に成長すると予想される国内メタバース市場(矢野経済研究所の調査)を背景に、今後どのような取り組みを行い、どんな人材を採用しようとしているのか。取締役COO、採用責任者兼XR CLOUD事業本部長の山下真輝氏に話を聞いた。(聞き手・文:水野香央里)
事業の柱は「メタバースプラットフォーム」と「イベント支援」
――御社はいまどのような事業を行なっていますか。
当社はもともとオンラインゲームの受託開発を行うために、2013年に設立された会社です。現在は多人数同時接続が可能な企業向けメタバースプラットフォーム「XR CLOUD」を開発し、これを軸としたXR事業を行なっています。
XRとは、VR(Virtual Reality。仮想現実)、AR(Augmented Reality。拡張現実)、MR(Mixed Reality。複合現実)の総称で、インターネット上の仮想空間を意味するメタバースは、XRを用いた空間上のサービスを指しています。
売上の7割強を占めるのは「XR CLOUD」のOEM供給です。お客様独自のメタバースプラットフォームを高速かつ安価に提供できるサービスで、IT企業やコンサルティング会社、大手商社や不動産会社などとお取引させていただいております。
また、当社の技術基盤とイベントノウハウを相互にフィードバックし、「XR CLOUD」上で行う展示会や交流会、ライブなどさまざまなメタバースイベントの企画・制作・運営をサポートする事業も行っており、売上の15%ほどを占めています。
このほか、日本初のゲームAI専門会社モリカトロンと、国産リアルタイム通信エンジンの開発・販売を行うモノビットエンジンの2社を傘下に置いており、この技術を「XR CLOUD」に取り込みながら、実証データをフィードバックして開発に活かしています。
――現在はどのような人材の中途採用に注力されていますか。
開発エンジニアの募集も行なっていますが、もともとゲームの開発会社だったこともあってエンジニア人材は比較的確保できています。一方で、「XR CLOUD」のプラットフォームや当社技術を使ってビジネスを作り事業を拡大していける営業職やディレクター職は、まだまだ数を増やして強化していきたいので、特に注力して採用活動を行なっています。
お客様から要望を聞き出し提案と運営まで請け負う
――どの職種でどのようなスキル、経験の人材を求めているのでしょうか。
「XR CLOUD」のOEM供給事業では、開発ディレクターと営業ディレクターを募集しています。大手企業のクライアントから「どういうプライベートメタバース空間を作りたいか」といった要件を聞き出し、開発を行って実現する仕事になります。
営業、開発ともにシステム開発の経験のある方、できればVRやARアプリの開発経験がある方が望ましいです。前職でいうとSIer出身の方や、アプリ開発の営業をされている方が合っていると思います。
XRイベントのサポート事業では、特に営業職を募集しています。こちらもお客様から「XR CLOUD上でどんなイベントをやりたいのか」の要件を聞き出し、最適なイベントプランを提案し、受注して運営を行っていくのが仕事ですが、こちらは開発経験がなくても、法人営業の経験があれば活躍していただけると思います。
メタバースのイベント経験のある方はあまりいないと思いますので、リアルのイベントプランナーや広告関係であれば十分です。ITベンダーでSaaSサービスの提案営業をしてきた方も、課題に対して提案していくという意味では近い仕事といえます。
――求める人物像のようなものはありますか。
当社はオンラインゲームの受託開発をする会社だったので、開発エンジニアはゲーム好きで、ちょっとゆるいカルチャーがあります。なので、営業職の方は、お客様だけでなく、社内のエンジニアともうまくコミュニケーションを取れる方が向いていると思います。
当社は基本的に社内で開発を行っていますので、営業が受注してきた案件を、イベントディレクターやエンジニア、デザイナー、クリエイターなど複数の社員と力を合わせて作り上げる必要があります。そのときに、ハートが強くないエンジニアの肩をそっと押してあげるマネジメントができる方が向いているかもしれません。
それから、リモートワークでもサボらず自走できて、KPIをきちんとこなしてくれる誠実で真面目な方に来ていただきたいなと思っています。
新しい業界なので「知識や経験は数年の差しかない」
――メタバースに関する知識や経験は必要ですか。
メタバース業界自体が新しい業界なので、知識や経験の違いがあったとしても数年の差でしかありません。新卒で入社して20代でリーダーとして働いている社員もいますし、頑張り次第で活躍できる業界だと思っています。
ですから、メタバースに興味があり、新しい業界にチャレンジしたい方であれば大歓迎です。色々なイベントがあるので、システム開発のエンジニアでも飽きずに仕事ができますし、「お客様とコミュニケーションを取りながら、いいものを作っていきたい」というコンサルティング営業がしたい方にとっても、業務の幅が広くて面白いと思います。
――人材の定着のために行っている施策はありますか。
当社はリモートワークが中心ですので、仕事をしやすい環境づくりには配慮しています。仕事用の机や椅子を貸し出したり、夏場のクーラー代などリモートワークでかかる費用に「リモート手当」を出したりしています。また、元ゲーム会社なので、ゲームの購入費用やオンラインゲームの課金にも補助が出ます。
リモートワーク中に運動不足になりがちなのでスポーツジムの補助を出したり、部下が一人で考え込んでしまわないようにZOOM上で集まって悩みを解決してもらう機会を作ったりしています。社内に部活があって趣味を通じて交流する場を作っているほか、年に1回は全社員がリアルで集まる会もあります。
経験者採用の場合、リモートワークであることを大きなメリットに感じていただける方も多いのですが、新卒の場合はあまり重きを置いていない人もおり、気づいたら転職を決めていたというケースもありました。そのあたりは人に合わせてコミュニケーションの取り方を考えていきたいです。
2024年には東京オフィスを新宿から渋谷に移転予定です。リモートワークを想定しているのでフリースペースを多めに取り、座席数は多くありませんが「気分転換や買い物のついでにオフィスに寄って行こう」という感覚で使ってもらって、社員同士の連携を深めてほしいと考えています。
将来的には「XRの技術力を活かしたDX」を目指したい
――今後はどのような取り組みを行っていこうと考えていますか。
2024年にはAppleからARゴーグルが発売されますし、新しいデバイスを使って自分の周りをAR化する世の中が徐々に広がっていくと考えています。当社もそのような流れを受けてメタバースだけでなくXR全般による課題解決を企業へ提案すべく、新しい部門を立ち上げました。
多くの業界で深刻化する人手不足についても、XRの技術を使って人材の能力の高度化や即戦力化を促進できれば、企業価値を向上させることができます。これまでの実績を活かして企業のDX進化の取り組みをサポートし、社会全体の生産性向上に貢献することを目指し取り組んでいるところです。
また、これまでは大企業の大型案件に優先的に取り組んでいましたが、今後は中型案件の受注の数も増やして、業績の安定化を図っていこうと考えています。
将来的には「リアル空間をメタバースでバーチャルにするDX」に加えて、XRに特化したSIerのような立ち位置で、デジタルツインの構築や災害シミュレーションの作成、メタバース空間での教育研修など「XRの技術力を活かしたDX」をお客様に提案できる会社を目指していきたいです。