コカインは主にコロンビアで生産されており、一部は海を越えてヨーロッパに渡るものの、最も多く消費しているのはアメリカだ。日本に密輸されるのは微々たる量で、希少性ゆえに値段が高くなっている。
こうした背景のあるコカインを、瀧容疑者が習慣性を帯びるまでやっていたとするとなら、「相当に奥深い『通』としてドラッグをやっていることになる」と分析する。
「ヨーロッパは(中略)そもそも密売されて出回っているコカインは純度が低かったりします。純粋なコカインと純粋な覚醒剤を比べるとコカインのほうが精神依存度が高いんですが、ストリートで売っているものは依存度が低い。だから、自己管理できるドラッグとして嗜まれている側面がある。こういう諸々の環境が相まって、ヨーロッパやアメリカ、北米では、『マネージできる嗜みのうちに含まれる悪いことなんだ』という意識があります」
とはいえ、使用し続けることで必ず身体に悪影響は出る。モーリーさんは「コカインで勝ち組になることはありえない」とも言い切っていた。
コカインの生産ルートも、「全体の循環があまりにも非人道的」だと言う。コカインは、コロンビアの貧困・紛争地域で他に何もできない農民がやむなく生産し、麻薬カルテルが運んでいる実情がある。
「不幸の連鎖の上で成り立っていて、南北格差も広まっている。コカインに手を出すことは、人道的にも人を苦しめることになりかねない。そういう自覚は持つべきだと思います」
「非日常がもたらす快楽に人間はどう付き合うのか、哲学を持つ必要がある」
「覚醒剤が悪い」「コカインが悪い」と、薬物を単独で取り上げると「全体像が見えなくなる」とも指摘する。
「人間の脳の中に快楽を求めるメカニズムがあるので、いずれ何らかの形でそれは目の前に表れる機会があると思うんです。(中略)一部の特権を持った、甘えている芸能人が崖から転がり落ちてざまあみろという見方でなく、一罰百戒というよりも、ドラッグがそこに存在する、これとどう向き合っていくのか。リハビリテーションする人をどう応援するのか、そっちに視点を動かすのが良いのではないかと思います」
海外では、『アイアンマン』などで活躍する俳優のロバート・ダウニー・Jrさんが過去、薬物中毒で何度も捕まっている。しかしその後、リハビリを経て俳優に復帰した。モーリーさんは、
「快楽は人によっては、ギャンブルに依存する人もいれば恋愛に依存する人もいる。非日常がもたらす開放感みたいなものが快楽の原則にありますので、それに人間はどう付き合うのか、哲学を持つ必要があると思います」
と述べていた。