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「人や街の幸せを想い、寄り添い、未来志向でのサービス充実を目指す」野村不動産ホールディングス株式会社が実現しようとする”不動産のDX”とは

野村不動産ホールディングス株式会社 DX・イノベーション推進部 部長 川合 通裕さん

あらゆる企業がDX推進を進める中、さまざまな不動産企業のDXの取り組みが明らかとなった。野村不動産ホールディングス株式会社もそのひとつである。具体的には、業務効率化の取組として、不動産管理プラットフォームを開発・提供する企業へ出資し、デジタル活用により管理品質向上や省時間化を推進。また住まいのサービスプラットフォーム開発や働き方改革を推進したオフィスの活用法など、他企業との差別化も図り、DXを加速させ新しいサービスの提供も模索する。

ホールディングスとして多岐にわたる事業分野のDX推進をまとめるのは、「DX・イノベーション推進部」だ。不動産開発や賃貸資産運用、仲介・CREなどの分野で、DXをどのように進めているのか。また、「DX・イノベーション推進部」の役割や考え方について、推進部長である川合 通裕さんに詳細を聞いた。

時代の流れに沿った、不動産業界の新たなDXの役割

――野村不動産ホールディングス株式会社としては、「住宅部門」「都市開発部門」「資産運用部門」「仲介・CRE部門」「運営管理部門」という5つの事業領域でグループ経営をされていると存じ上げておりますが、その中でも川合さんの統括されている「DX・イノベーション推進部」とは、どのような役割をされているのでしょうか。

部門としては5つに分かれていますが、住宅部門と都市開発部門はいわゆる開発事業、デベロップ部門とそれ以外はサービスマネジメント事業として大きく2つのグループに分けられます。そのグループの中で、新たなDXの取り組みを推進していこうということで、2019年からDXとICTおよびR&Dイノベーションを連携して担う「DX・イノベーション推進部」として体制強化しました。

DX・イノベーション推進部の役割としては大きく3つあり、いわゆるグループ情報システムを担う「ICTマネジメント」、グループのDX戦略策定・推進支援の「DX推進室」、そして新領域事業の探索・調査研究の機能をもつ「R&D推進」となります。

R&Dでは新たなテクノロジー活用や事業へのシナジー効果を目指して、CVC(Corporate Venture Capital /コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を活用した取り組みを推進しており、ベンチャー企業を中心に現在7社ほどに投資しながら、各事業部門との連携を図っております。今後、不動産DXの分野では、ますます他の企業との関係を深め、当社にないスキル活用とスピードアップに取り組みたいと考えています。

本業を進化させるデジタル化の取組においては、各事業部門と連携して新たな商品サービスの変革を目指すDX推進の役割も重要ですが、その前提として、コミュニケーションツールやクラウド活用、インフラ基盤の整備や業務効率化といったICTの取組が欠かせません。当部においては、このDXとICTの両チームが連携して取り組む体制としております。

徐々に進みゆく不動産業界のデジタル化・電子化・データ活用の流れとは

――不動産というといわゆる紙文化といいますか、どうしても電子化・デジタル化にかなり障壁があるイメージを持ってしまいます。それも、やはり銀行とのやり取りですとか、公的な文書のやり取りが発生するためやむを得ず、といったところもあるかと思います。そのあたりの、不動産産業におけるDX推進の難しさや課題への取り組みは御社としてはいかがでしょうか。

そうですね。ペーパーレス化に関して言うと、不動産業界は他の業界と比べてずいぶん遅れているというか、規制が厳しいのが現状です。特に、宅建業法上は売買契約の際に対面で書面の説明が必要で、両者立ち合いの下で読み上げを行わなければならないといった規制があるのも事実です。それは我々にとってもお客様にとっても、不動産という大変高価なものを取引するにあたっては必要なことだとは思います。ただ、それ以外の、もっとライトな部分に関してのやり取りについては、利便性向上のために当社でも積極的に電子化を進めております。

また、住宅販売に関しましても、これまでは必ずモデルルームの見学をお願いし、何度も対面で接客をして内覧していただいて…というのが主流でしたが、今はデジタル化されている情報が豊富にありますので、お客様の興味関心のあるものを自動的にレコメンドして電子データで提供できる仕組みや、接客についても非対面でご相談に対応し、最終的にモデルルームをご見学いただいてご契約、といった流れに変化してきています。

その流れに乗るためにデジタルバックを整えるといったことが必要ではありますが、さらに規制緩和も進められ、不動産業界にも電子化が浸透・加速していくもの、と思います。

――どの業界もそうかもしれませんが、特に”不動産”には、人々の行動や嗜好に関する膨大なデータが蓄積されていると感じます。その点、「データ活用」に関してもお取り組みをされているかと存じますが、現時点での考えや施策などがあれば教えていただけますでしょうか。

まず「我々のデジタルは、一体何のためにあるのだろうか」ということについて考えます。これまでにもアナログではありますが、”住まい”や”働き”、”憩う”といった形でお客様との接点を持ち、細やかなサービス提供はしてきました。ただそれをより合理的に、また好みや利便性を損なわずに、しっかりと提供できる変革が必要と思っています。

そのためには、お客様の情報の共有化が重要となってきます。簡単に言えば、「顧客ID」のような形ですね。お客様が弊社のマンションに暮らしながら弊社のオフィスビルで働いておられて、弊社のサテライトオフィスを利用したり商業施設でご飯を食べたりと当社グループとの接点は多数存在し、その全てで顧客の期待を上回ることを提供していきたい。もちろんプライバシーやセキュリティの関係はありますが、もっと簡単につながっていける仕組みを今考えているところではあります。

QOLの向上を目指した、不動産だからできるDX推進

――現在、野村不動産グループにおけるDXの考え方として、新たなサービスによる価値の付加や、管理運営による適切なメンテナンスでバリューを上げていき、社会変化に対応していくといったところかと思いますが、そちらについてはいかがでしょうか。

そうですね。そもそも不動産というものは、他の商品とは違ってものすごく長いスパンで考えていくものですよね。身近な消耗品のように好みに応じて買ったり売ったり、買い替えたりするものではなくて、住まいというものは30年、40年と、人生を共に歩んでいくことになります。我々はそこに対してきちんと価値を提供し続けるということが求められます。劣化を防ぎながらも、より新しい価値をグループ全体で提供していきたい。そうした「人々の暮らしを豊かにするQOLの向上」というビジョンを実現するために、手段としてのDX推進を捉える必要があると考えています。

目先の新しい技術、ロボットだったりAIだったりはツールに過ぎません。それらを活用して、何をもたらしたいのか、が重要になるのではないかと思います。例えばロボットが商品を自宅まで運んでくれる時代になったとして、単なる利便だけではなく、薬をお届けして高齢者の見守りや安心につなげる、ですとか、AIによる外壁診断により適正な修繕工事を行って長寿命化を実現させる、などといった、その先にあるQOLを向上させることが重要となります。その実現のためにテクノロジーをどんどん活用しよう、というところに行き着いたということになりますね。

――野村不動産ホールディングス株式会社のDX推進の全体像としては、「DX1.0」と「DX2.0」という二つの戦略領域があるというふうにうかがっています。具体的に、どのようにDXを進められたのでしょうか。

端的に申し上げると、「DX2.0」はいわゆる攻めのDXです。新領域の事業開発だったり、新しい商品やサービスの創造だったり。外に向かっていくような、お客様に対してのDX戦略になります。一方で、「DX1.0」は情報システムや、コミュニケーション、業務システムなどの社内の仕組みを改善していくような内容になります。図を見ていただくと、ピラミッドのような形になっていますけれども、土台がしっかりしていないと当然新しい取り組みもできないですし、我々社員の働く環境を整えることで攻めの一手が打てる、ということにもつながっていきます。流れ作業が多いところはどんどん効率化する。そして生み出された貴重な人材を活かして、新しいサービスの形を作っていきたいと思っています。

図の下から順番に進めるというよりも同時並行でやらなければいけないことなので、当部ではDX推進室が2.0領域を、ICTマネジメント課が主に1.0領域を主に担い、事業部門と連携して進めるといった流れになっています。

――DXを推進し、人々の「あしたを、つなぐ」。野村不動産ホールディングス株式会社の、今後の目指す展望や目標を教えてください。

目指しているところに行くには、やはり人材不足というのがあります。我々の部署もまだ立ち上がったばかりで40数名といったところですし、各事業部門でもやりたいことがあるけれども、人がいなくてなかなか手がつけられないという状況もございます。

新しい時代の変化に合わせて、多様なスキルを持ったDX人材の採用を積極的におこない、当社グループ全体で活躍していただきたいという考えもありますし、既存の部署からも新たなスキルを身に着けていただき、部署の垣根を越えて力を合わせていきたいところです。

業務効率化やAIでできることはどんどんテクノロジーを活用する。そして無駄な仕事を省いて生まれた「潜在余力」を新たなDX要員として活躍してほしいと思っています。キャリア採用と人材育成を同時に進めながら、新たなDX事業を開拓し、さらなるグループの成長を図っていければと考えております。

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