井上氏は「ゴールデンウィーク中も仕事があったので外出する機会があったが、以前と変わらないほどの人がいた」と街中の印象を話す。
「菅首相や小池都知事は『ホワイトカラーならば、言えばテレワークにシフトする』という考えかもしれませんが、現場仕事を始めとするブルーカラーの人はそうもいきません」
井上氏の印象では、朝6~7時に電車で通勤する人の量はやや減っているかもしれないが、10時台にいたってはいつもより混んでいるという。「飲食などのサービス業、交代勤務の人は働き方が変えられないので、かえって普段より混んだ電車に乗っています」と首を傾げる。
それにも関わらず減便という政治判断に、不満を抱いているようだ。井上氏は、
「感覚的に捉えられていないと思います。私鉄を含む在来線はずっと混んでいて、乗客の荷物を見ていると現場仕事の方も多いと感じます。ところが、政治家が実態にそぐわない対策をしていることで、チグハグさを感じています」
井上氏の周囲にも完全にテレワークで仕事をこなす人がいるという。その人は商社のように、工場で製造した洋服の移動を指示する仕事をしており、普段はスマホを片手にインターネット経由で指示を送っている。
「ところが、指示を受けた運転手、荷さばき役の労働者は結局現場にいなければなりません」
管理側の仕事内容はテレワークに移行しやすくても、現場にはその指示を受ける人がいなければならない。「そうすると電車やバスに乗らねばならず、国に『来るな』と言われて来ないわけにはいきません」と労働者側の心情を解説した。
根底にあるのは「菅政権の場当たり的な政策発表」
では、どのような政治姿勢が望ましいのか。井上氏が指摘するのは、菅政権の場当たり的な政策発表のまずさだ。
「首相は根拠を示した上で『こう決めました』と公表すべきですが、菅首相の場合はいつもエビデンスに欠けると感じています。何かをお願いする時には、必ず根拠と期限を示した方がいいと思います」
その上で「例えば、現在は国内のワクチン普及にお金を使うので、それが終わるまで公的補助は待ってください――というように話せば、みんな納得すると思います」と語った。
こうした政策説明の下手さが目立っているため、国民も言うことを聞かなくなっている。井上氏は、
「JRからしたら乗客の安全を守ることが一番です。万一誰かが転倒し、ドミノ倒れになる可能性もあります。構内の安全を確保するためにも、通常ダイヤで走らせるのは当たり前ですよね」
と改めて話し、国や都の要請がいかに的外れなものだったかを強調した。