長生きしたけりゃ「デジタルデトックス」すべき? 英BBC記者が「週末24時間仕事断ち」を体験
デジタルデトックスが長生きの秘訣――。そんな時代がやってくるのかもしれません。テレビや雑誌で特集される健康情報といえば、食事や運動に関するものが定番ですが、米国在住の英BBC特派員ピーター・ボウズ氏は、デジタル機器をオフにすることも長寿の秘訣になりえるのではと考えているそうです。
彼がこのように考えるようになったのは、米カリフォルニア州の都市ローマ・リンダを取材で訪れたことがきっかけでした。この街に多く住むのは、世界的にも長寿で知られるキリスト教の一派です。(文:遠藤由香里)
「金曜日の日没から24時間」は仕事を忘れる人々
彼らの長寿の秘訣は食事や運動だけでなく、「金曜日の日没から24時間は仕事のことを忘れ、家族や友人と過ごす」という生活習慣にあると、複数の研究者が指摘しています。
とはいえ、現代の生活では休日だからといって仕事を完全に忘れるのは簡単なことではありません。自宅でメールを見られる人や、仕事関連の人とSNSでつながっている人も少なくないでしょう。
レコードセッター社のCEOダン・ロールマン氏は、「安息日宣言」として休日を作り出すための10のリストを公開しています。その中のひとつ「デジタル機器から離れ屋外に出ること」という項目は、毎年3月の「ナショナルデー・オブ・アンプラギング」に発展。これはデジタル機器への接続を控える日を呼びかける運動で、今年で6年目を迎えました。
この運動のマネージャーであるターニャ・シュツェビッツ氏は、「デジタルデトックス」の効能について次のように述べています。
「相手は『電話、タブレット、パソコンなどのどんなアラートや着信にもすべて応答してくれるだろう』という期待があるんですよ。これが不健康な状況を作り出していると思います。私たちにはもっと休息が必要なんです」
フリーランスの記者でも「デジタル断ち」は可能だった
ボウズ氏は、デジタル機器に触れない休日を自ら実践しました。彼が休日としたのは土曜日の18時から日曜日の18時まで。以下の決まりを作って臨んだといいます。
・電話やメールを見ないことを、近しい人にはあらかじめ知らせておくこと
・休みの前日は仕事をはかどらせ、気持ちよく仕事を終えること
・休みに楽しい予定を入れること
・返信が遅くなってもたいした問題ではないと思うようにすること
・携帯を使うのは写真撮影のみ
フリーランスの記者という仕事上、不安がなかったわけではないといいます。仕事を逃してしまう可能性があるからです。しかし、24時間のオフを経た結果、FacebookやTwitterの通知は大量、メールは21通が届いていたものの、急ぎの用件は1件もなかったのだと言います。彼はこうまとめています。
「24時間デジタル機器から離れたことを心地よく感じたのが意外だった。(休日でもメールやSNSをチェックするという)慣れた生活習慣から外れた暮らしをしたわけだが、困ったことは何一つ起きていない。今は平穏な気持ちだし活力に満ちている。だが、今後これまで通りの生活に戻っては何も変わらないので、1年間かけて生活習慣を改めようと思う」
長い人類の歴史を思えば、デジタル機器やインターネットが登場したのはほんの最近のこと。平日も休日もオンラインを続ける生活が寿命にどういう影響を与えるのか、数十年後に検証される日が来るのかもしれません。
(参照)Is this the secret to living longer? (BBC)
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