10億円でも立ち退きに応じなかった店主のプライド 「あいさつできれば客がいなくてもいい」 | キャリコネニュース
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10億円でも立ち退きに応じなかった店主のプライド 「あいさつできれば客がいなくてもいい」

街で見かける「客がいない店」。何十年も潰れずそこにあり、「いったいなぜやっていけるんだろう」と首をひねるようなお店が、あなたの街にもありませんか?

そんな謎に真っ向から切り込んだ番組を、6月14日にテレビ東京が放送していました。その名も「客がいないのに潰れない!気になる店をのぞき見SP」。お客がゼロの日が続いても、立派に営業しているお店の数々と潰れない秘密が明かされました。(文:篠原みつき)

お金より「働いてるのがいいの!」

働いて生きる、生きるために働く

働いて生きる、生きるために働く

番組は独自の調査でターゲットとなるお店を探し出し、定点カメラで観察、さらに店主本人に直接取材を行います。その店のひとつが、秋葉原駅からわずか300メートルという好立地に、明らかに周囲とは異なるレトロな佇まいで営業する「岡昌裏地ボタン店」。

店の前を人が通るたびに、店内から威勢のいい「こんにちは!」という声が響き、近所の人が雑談することもあります。しかし、何時間経ってもお客さんは来ません。レポーターのスギちゃんが「客がいない店の取材です」と告げると、店主の岡武夫さん(71歳)は実に明るく笑います。

「うん、客いないわ。ンハハハハハ!」

毎日きまって朝8時に開店し、道行く人に元気にあいさつし続け、道を尋ねられること連続2回。「あいさつできれば客がいなくてもいいんだよ」と笑う岡さん。120年続くボタンと裏地の専門店の3代目で、この界隈で多くあったボタン店の残り1軒を守っています。

バブルの頃は10億円で立ち退き話もあったそうですが、スギちゃんが「ビルとか建ててマンションにして、家賃収入にしたら」と訊ねると、間髪入れずキッパリ答えました。

「そういうのはダメですよ。そういうのは、あの世へ行く準備だからな。働いてるのがいいの!」

松戸から来たという洋服屋さんが、その日初めてお客さんでした。このお店、高級紳士服の仕立て業者が常連なのでやっていけるそうです。

銀座の絨毯店「ここは倉庫」

東京・銀座で月50万円の家賃を払いながら、34年間続く高級ペルシャ絨毯の店「ペルシャン・プラザ」は、取材を始めて5日間も客がゼロ。

しかしある日、数億円分の絨毯をトラックで運び出し、宇都宮の百貨店で展示販売会をすると、開業医のご夫婦などに1日で3枚、総額630万円が売れました。社長のバシーリ・メーディさん(77歳)は潰れない理由をにこにこしながら明かします。

「売り上げの99.9%が地方の百貨店。(銀座の店は客が来なくても)全然問題ない。倉庫です」

近所の商店主は全く客が来ないことを心配して、「よくやってると思って。尊敬するオレ。経営者を」と感心していましたが、このカラクリを知ったらもっと尊敬することでしょう。

紹介された店は「自分の土地建物だから賃料がなく、潰れない」という共通点が目立ちました。82歳の金井幸枝さんがひとりで営む葛飾区・金町商店街のジグソーパズル専門店や、東京の1等地、渋谷・恵比寿の住宅街でレトロ過ぎるゲームセンターを35年間続けている人も。

恵比寿の店は、ゲームが古すぎでほとんど誰も遊びに来ませんが、「金じゃないですからね、これは」と店主の荒巻徳蔵さん(88歳)は言います。開店当時は高校生だった子が子ども連れで遊びにくるとき、やっていて良かったと感じるそうです。

「働いて生きる。そこは、自分らしく誇りに思ってます」

このVTRを見た森永卓郎さんは、「(恵比寿なんて)賃貸にまわした方が100倍儲かると思いますよ」とポツリ。「金じゃない」といった荒巻さんと、あまりにも対照的です。

また、東京・目黒では40年寿司職人をしていた人が、体をこわした後、寿司屋の店舗を自転車パンク修理専門店にしてひとり働く姿も紹介しました。実はアルバイトで、月末になると自転車修理を教えてくれた親方の元へ売上げを持っていきます。

少ない月でも3万円の給料は保証されているとのこと。年金とバイト料で、ひとりで自分の暮らしを立てていく理由を、和栗昭栄さん(78歳)さんはこう語りました。

「人間の生きる原点。働いて生きる、生きるために働く。そこは、自分らしく誇りに思ってます」

登場した店主の皆さんは、「儲けに関係なく自分の好きなように商売する」という人たちばかりでした。「生涯現役」が継続の原動力になっていることも確かでしょう。世代の違いはあれど、「割に合わない仕事はしたくない」と考える自分は、頭が下がる思いがしました。

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