ようは、高校生からすれば「知りたければ見に行く!」わけだ。それなのにわざわざ忙しい授業中に割り込んで来て、うるさく喚くなんて、どんだけ空気読めてないんだよ、となるのである。そもそも18歳未満だと投票権もないし、他人事感満点だろう。「うるさい」以外の感想はないだろう。
そもそも選挙カーの連呼・演説については、学校や病院などの周辺では「静穏を保持するように努めなければならない」(公選法140条の2)という決まりまである。特に音量は決まっていないが、常識はずれの音を出していたら「配慮のできなさ」を大々的にアピールしているようなものだ。逆効果もいいところだろう。
さて、では、選挙カーが狙っている「お客さん」が誰かというと、それはパソコンやスマホを使わない層だ。主には高齢者だろう。ネット選挙解禁以前は、選挙カーや辻立ち演説も候補者の情報を手に入れる貴重なチャンスだった。ポストに届く選挙公報だけでは、なんだかよくわからないことも多い。選挙カーで名前を連呼しているのが聞こえたら、ちょっと耳をすまして演説を聞いてみようか……みたいなことが起きていたのである。
ただ、そこから時代は変わり、今では高校生でなくても、連呼は不要と感じる人が増えていそうだ。それなのに、なぜいまだに候補者は選挙カーで連呼を続けているのか?
「他にすることがないから……」
荻野稔・大田区議会議員は、政治家が選挙カーで地域を回る理由について、「選挙期間中、他にすることがないから」とぶっちゃける。
荻野議員がこう言う理由は、日本の公職選挙法が「べからず法」と悪口を言われるぐらい、あれもこれも「やってはいけない」と禁止しているからだ。たとえば、戸別訪問や証紙のないビラの配布は禁止。選挙カーの台数も決まっている(参院選では原則1陣営1台。合区は2台など)。選挙カー上でも、やっていいのは「連呼行為」と「停車したうえでの演説」だけである。
「会場を借りて演説会は開催できますが、時間も場所も限られます。そうすると、選挙期間中にできるのは、選挙カーで名前を連呼することがメインになります。人の多いところで名前を連呼しようと住宅地にいけば、うるさいのは当然ですよ」
そんなことで、日本の「選挙活動」は、やれることの幅が狭い。実際、選挙区の広い参院選などでは「うるさい」と思うどころか、選挙の話題で盛り上がることもほとんどなく、候補者がどんな人かも把握できないまま、投票日を迎えてしまうことのほうが多いのではないか。
荻野議員は「禁止されている戸別訪問や、グレーゾーン扱いのポスティングなんかは、選挙活動として認められてもいいと思います」と
そんなことで、アホくさいところのたくさんある選挙制度。さっさと法律を変えればいいのだが、なかなかそういった議論は進まない。なにせ、それを議論するのは当選した国会議員たち。今のままのルールが「都合のいい」人たちなのだから……。