いいことばかりではない「在宅勤務」――評価の機会や自己管理、孤独という問題もある
先進国で在宅勤務の導入が広まっています。日本でもリクルートが全社員を対象とした導入を発表したばかり。「通勤の苦痛から解放される」「子育てや介護との両立がしやすくなる」と期待も高まりますが、必ずしもメリットばかりではないようです。
若者のキャリアに詳しいジャーナリストのJ.マウリーンヘンダーソン氏は、米フォーブスに「在宅勤務で忘れられがちな3つの落とし穴」という記事を寄稿しています。彼によれば、在宅勤務には「評価の機会」と「自己管理」、そして「孤独」という問題があるそうです。(文:遠藤由香里)
仕事ぶりを直接見られないデメリット
ヘンダーソン氏が指摘するのは、企業の多くは「多様なワークスタイル」が共存する職場を管理するのに長けていないこと。これまで誰もがオフィスで働くのが一般的だったことを思えば、無理もないことです。
マネジメントの目が届きにくい職場は働きにくいだけでなく、社員のキャリアにも影響があります。ヘンダーソン氏が最初に指摘するのは「評価の機会」への影響です。
古い会社では「長く会社にいる=コミットメントが高く、より生産的」と見られる傾向があるのは、日本企業だけではありません。
在宅勤務で働く人が増えると、誰がどれだけ頑張って仕事をしているのか見えにくくなり、実際にサボる人も出てきます。米Yahooが「在宅勤務制度」を中止したのも、在宅での仕事はオフィスの仕事より生産的でないと考えられているのが背景にあるといいます。
上司や同僚との何気ない会話の機会とともに、周囲に仕事ぶりを見てもらう機会は社内で認められるために必要なこと。確かにマネジメント力を評価するためには、目に見えるアウトプットだけでなく、コミュニケーションなどのプロセスも大事になってきます。
在宅勤務を選択することで、貴重な戦力となることは間違いありませんが、組織の中で昇進を目指すならチャンスを逃す可能性も考えなければならないでしょう。
自己管理できない「一夜漬けタイプ」は要注意
2つめの「自己管理」の問題も小さくありません。会社に来れば始業時間や昼休み、終業時間があり、この間に会議やクライアントへの電話などを行います。しかし在宅勤務ではこういったスケジュールはないので、自らを律して生産性を挙げる努力が求められます。
仕事人間なら昼食も取らずに仕事を続けたり、夜中にメール対応をしたりするでしょうし、ダラダラしがちなタイプであれば仕事が進みません。学生時代に一夜漬けするタイプだったら、なおのこと要注意。かつてのような生活に戻る可能性が大です。
3つめは「孤独との戦い」です。自宅で一人仕事をしていると、同僚と雑談して一息つくこともできません。自由と引き換えに、寂しさを許容しなければなりません。
特に最近の企業は、若者世代を惹きつけるために福利厚生や交流に力を入れ、職場が社会的な「ハブ」としての役割を果たしています。同僚との飲み会や会社のサークル活動などを楽しみにしているようだったら、在宅勤務で機会を失うと思ったほうがよさそうです。
メリットもデメリットもある在宅勤務。試みは始まったばかりですので企業も社員も試行錯誤は続きますが、ライフプランやライフステージに応じた柔軟な働き方があることは歓迎したいところです。
(参照)Three Pitfalls Of Remote Work That You Probably Aren’t Thinking About(Forbes)
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