米衣料メーカー「タダ働き募集!」に社員が殺到 「サービス残業」は日本だけのものではなかった
米国のアパレルメーカー「アーバン・アウトフィッターズ」は日本には未出店ですが、ヨーロッパを含めて140店舗を展開する人気のブランドです。この店舗を運営するアーバン社が、従業員から無償の週末労働ボランティアを募り、米国で反響が起こっています。
10月8日付のCBCニュースに、アーマン・アグバリ氏がレポートしたところによると、アーバン社の従業員は会社から週末に倉庫で、無償で働くよう依頼されたそうです。会社はこれを「自分の手で直に会社に貢献するチャンス」だとし、先月初めにフィラデルフィア・オフィスで働く従業員に送ったメールには次のように書かれていました。
「10月は一番忙しい月です。当社は注文のタイムリーな出荷を確実にするために、更なる手助けを必要としています」
月給払いの社員が「無償労働」に駆り出されている
そして従業員に対し「同僚と生産性あるチームを作り、活動をしましょう」と呼びかけています。参加する従業員は6時間働くと昼食が支給され、交通費が支払われています。
CBCニュースがアーバン社に問い合せたところ、回答は得られませんでしたが、他の報道機関から、従業員たちがこの無償の時間外労働にこぞって参加していることが伝えられました。
同社の代表は「驚いたことに、管理職も含め多くの応募を受けました」と述べています。応募者全員を受け入れるわけではないことも強調し、「多くの応募がありましたが、時間給労働者は雇用法に触れる可能性があるので、受け付けることはできませんでした」と結んでいます。要するに、月給払いの社員が駆り出されているようです。
しかしツイッターには「従業員がこぞって参加」という点に懐疑的なツイートも多く見られ、無償の時間外労働を募ることへの倫理性を指摘する者もいます。それでも小売業労働者へのこのような募集は、普通のことという意見もあります。デュアン・モリス法律事務所のパートナーであるジョナサン・シーガル氏は、Entrepreneur誌にこう語っています。
「小売業で従業員がもっと働けと言われるのは、珍しいことではありません。『仕事がたまっているから土曜日に出勤して欲しい、全員の手が必要なんだ』というような要請は日常的なものです」
シフト以外でも呼び出される「オンコール」も廃止へ
その一方でアーバン社は、従業員に対する「オンコール・スケジュール」という働き方を廃止し、従業員の勤務スケジュールを少なくとも1週間前までに公開すると発表しました。これまでのやり方では、従業員は週を通じて自宅に待機し、通常のシフト以外の時間でも急な呼び出しに応じて働かなければならないというものです。
しかも出勤2時間前までにチェックインの電話をしないと、無償労働になってしまいます。同業のGap、Abercrombie、Victoria’s Secret社も同じようなオンコール・スケジュールを行っていましたが、すでに全米で廃止済み、または廃止予定です。ただしアーバン社の措置は、州当局が事情解明を求めたニューヨーク州だけに限ったものです。
オンコールを廃止している店舗では、従業員は満足しているようです。労働者の権利擁護団体であるリアルアクション・プロジェクトのディレクター、レイチェル・ラフォーレ氏は「Victoria’s Secret社の社員は、みんな人間性を取り戻せたと感じています」とBuzzfeedに語っています。
人手が足りないと、月給支払の正社員が穴埋めに向かい、その分の残業代や休日出勤が支払われないところは、日本の小売業や外食産業で行われている「サービス残業」とかなり似ています。サビ残は、日本だけのものではなかったのですね。(文:夢野響子)
(参照)Urban Outfitters tries to make ‘working weekends for no pay’ a hot fall trend (CBC)
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