年間5000人が行方不明に! 「外国人実習生」の失踪は地域住民との交流で防げるか?
途上国などの青年に、日本で最長3年間働きながら技能を身に付けてもらう「外国人技能実習制度」。2010年以降に増加し続け、現在では約16万7000人もの実習生がいるとされる。
しかし中には職場から失踪する実習生もおり、2014年度は実に4800人が行方不明となっている。11月17日の「おはよう日本」(NHK)では「”集落講習”で実習生の失踪防げ」と題し、新潟県糸魚川市のある地域が始めた取り組みを紹介していた。
背景に「悩みを打ち明けられる相手」の不在
人口約150人の小滝地区にミャンマーから7人の実習生がやってきたのは、11月初めのこと。実習生は企業に派遣される前に専門学校などで一定期間、日本語の講習を受けることになっているが、その場所として選ばれたという。
この企画をしたのは、3年前からミャンマーから実習生を送り出す事業を行っている渋谷修二さん。実習生の2割が待遇の良い職場を求めて失踪しており、頭を悩ませていた。背景にあると考えられるのは、「悩みを打ち明けられる相手がいないこと」だ。
講習後、実習生は仲間と離れて企業に派遣されるため、職場で「賃金が低い」「雇用契約が守られない」と悩みを抱えても相談する相手がいない。契約上、実習生には自由に転職する選択もない。そういった辛い状況が重なると、失踪に至ってしまうのだ。
そこで渋谷さんが取り組むことにしたのが、実習生の相談相手を作ること。実習生が仕事で悩んだとき電話などで相談できるよう、小滝地区の人に協力を要請した。講習には、地域住民との関係を深めるプログラムも用意。番組では、実習生に自家栽培の野菜を手渡す人や、公民館で行われた輪投げ大会の様子が映し出されていた。
過疎に悩む集落の住民も実習生を歓迎
地域住民との触れ合いを通じ、ある実習生は「日本での居場所を見つけられそうです」と話していた。渋谷さんも、手応えを感じているようだ。
「(実習が終わった)3年後、また糸魚川に帰ってきて『じゃあ(ミャンマーに)帰ります』という形が一番ベストでしょう。そうなるような気はします。確信はまだ持てませんけど」
過疎に悩む集落の住民も、実習生を歓迎している。現在講習を受講しているのは7人だが、今後は60人程度まで増やしていくとのことだ。確かに慣れない異国の地で頼れる人がいないことは、かなり心許ないだろう。実習生の精神的支柱として一役買いそうだ。
根本的な対策は「労働環境の整備」なのでは?
ただし視聴者からは年間5000人もの失踪を防止するためには、根本的な対策を講ずるべきだとする声も相次いでいる。それは労働環境の整備だ。
外国人実習生は「安価な労働力」と期待されているところもあり、過酷な労働環境に派遣される場合もある。2014年に労基署が監督指導を実施した実習機関の76.0%で、労基法などの違反行為が認められた。賃金も最低賃金レベルで設定されているところが多い。
「日本人並の労基法順守とかそういう方法には行かないのか?」
「交流させる前に契約違反を取り締まれよ…という気しかしませんでしたよね」
「賃金高くしてやれよ。特効薬だ」
違法行為の相談を受けたら、小滝地区の人たちから行政に通報するルートができればいいと期待する人も。もしも人間関係で足抜けを防ぐだけのしくみだとすれば、批判は免れないだろう。
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