黄色いシャツに濃紺の蝶ネクタイ 清掃業で働く人に誇りを持たせた「真田ジャパン」の英断 | キャリコネニュース
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黄色いシャツに濃紺の蝶ネクタイ 清掃業で働く人に誇りを持たせた「真田ジャパン」の英断

人手不足の昨今にあって、3Kといわれる仕事でありながら入社希望が絶えない会社がある。2月2日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、栃木県にある廃棄物処理会社「真田ジャパン」を取材していた。

那須塩原市に拠点を置き、一般廃棄物と産業廃棄物を扱う従業員60人ほどの会社だ。朝から一般ゴミの回収作業を行う社員の服装は、黄色いシャツに濃紺の蝶ネクタイと黒のズホン。パチンコ店の店員と間違えられたというのも納得だ。

勤続10年で家族全員に「海外旅行をプレゼント」

真田ジャパンのウェブサイトより

真田ジャパンのウェブサイトより

服装がカチッとした印象を与えるため、道行く人が気軽にあいさつする。近隣のおばあさんにも「清潔感があるし、ただの作業服と違ってすごくいいね」と好評だ。真田ジャパンの五月女明社長は、「市民の皆さんの視点を変えていきたい」と語る。この制服によって、3Kと言われるゴミ収集の仕事に対するイメージを変えたいという、強い想いがあるのだ。

クリーニングした制服を、毎日会社が支給。収集車は毎日40分かけてピカピカに洗車するので、悪臭は全くない。ゴミ収集だからこそ、きれいな服で気持ちよく働ける職場が大切なのだ。汚い・暗いというイメージを変える逆転の発想だと、五月女社長は語る。

「汚れたら仕事中でも着替える。それが働く皆さんの意識高揚につながる」

産廃処理業者が廃棄食品を横流ししていた問題で、業界に不信の目が向けられているなか、予約なしでいつでも施設内を見学可能にし、客の信頼を勝ち取っている。この施設ができてから、売り上げは1.7倍に増加した。

独自の制度は家族も大切にしている。勤続10年の社員には海外旅行を家族全員にプレゼント。課長職以上には家族にもボーナスが支給される。こうした配慮が仕事に対する家族の理解や安心を生んでおり、親子2代、3代で働く人も少なくない。また、募集せずとも入社希望者が絶えないという。

「私は一切『儲けろ』とは言いません」と社長

こうした取り組みを始めたきっかけは、ある社員の言葉にあった。町でおじいちゃんが働く姿を見た孫が、家に帰ってから「おじいちゃん、あの仕事やめてほしい」と言ったそうだ。それを聞いた五月女社長は、ハンマーで頭を打たれたような衝撃を受けたという。

「これほど家庭の皆さんは悩む、辛い思いをしている」

五月女社長は、一連の改革を断行。以前の制服はグリーンのツナギだったが、パリッとした黄色いワイシャツと蝶ネクタイに変えた。最初は恥ずかしかったという社員も、今は誇らしげに仕事をしている。

同社では、「ご家庭何でも応援隊」という、家庭のちょっとした困りごとを引き受ける新事業もはじめた。3年前に全国展開をはじめ、去年11月には東京進出を果たしている。実は営業の社員を置いていないが、誠実な仕事ぶりが評判となり、順調に事業を拡大中だ。五月女社長は、次々と仕事が舞い込む秘訣をこう語る。

「私は一切『儲けろ』とは言いません。『お客さんを喜ばせてこい。感動してもらってこい』と言う。すると社員は、一生懸命やってくれます」

「嫌なら辞めろ」と言われがちなところに商機あり

現地取材した大浜平太郎キャスターは、「制服が違うとゴミの分別じゃなく宝探しをしているみたいですね」と感想を漏らし、社長の言葉に「あの制服を着て、あいさつが良くて仕事をキビキビする、それが営業になっているということですね」と納得していた。

ゴミ処理は、私たちが衛生的に暮らす上で絶対になくてはならない仕事だ。大変お世話になっているにもかかわらず「汚い仕事」というイメージが付きまとうのは悲しい。しかしここで働く社員の様子は、まるでホテルマンのように堂々としたものだった。

大抵の経営者は「孫にどう言われたってしょうがない。嫌なら辞めろ」と言いそうなところを、コストがかかっても人材を大切にすることで、商機が広がることを示した好例だと感じた。(ライター:okei)

あわせてよみたい:「やる気がないなら帰れ」で本当に帰る若者はダメなのか?

 

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