帝国ホテルのバカッター騒動で考えるサービス業のあり方 時給1000円のバイトが働く現場で「最高のおもてなし」は維持できるのか
サービス業に携わっている人が、客の情報をSNSで勝手に発信して炎上するケースが依然として多い。不動産屋が部屋を探しにきたタレントについて投稿したり、飲食店の従業員が著名人の食べたメニューを無断で紹介してしまったり。特に、アルバイトや派遣といった非正規従業員がやらかしてしまうことが多いようだ。
5月20日にも、従業員が顧客情報を勝手にツイッターに投稿したとして帝国ホテルが謝罪文を発表している。(文:松本ミゾレ)
バカッター騒動を引き起こしたのも「業務委託先の従業員」
この従業員は16日、ある人気女性アイドルが来館したとツイッターに投稿。「帝国ホテルで俺働いてるんだけど」と自分で勤務先を明かしており、典型的なバカッターといった具合だ。
とんでもない従業員だ! と思ってしまいがちなんだけど、この話、よくよく首を突っ込んでみたら、「さもありなん」と言いたくなるようなところもある。この困った従業員は業務委託先の企業から派遣されてきたホテルマンだったというのだ。
帝国ホテルといえば洗練されたサービスで、宿泊者に対して一流の接客をするイメージがあるが、直接雇用でなければ、自分の職場に愛着も湧きにくい。これでは意識が高くなりようがないだろう。
さらに、今度は同ホテルのバイトに関する情報がネットで話題になっている。バイト求人サイト「フロムエー」では、帝国ホテル東京で働くバイトの時給と仕事例が紹介されている。レストラン部門は時給1100~1300円と比較的高いが、フロントや、ベルマンなどが働く宿泊部門は1000~1170円が主流。最初の2か月半は試用期間として時給が910円になる職種もある。ちなみに、今の東京都の最低賃金は907円だ。
「人を安く使うのが当たり前になりすぎて、おかしくなってきている」
また、求人ページでは、
「日本国内外からお越しいただくお客様に、特別なひとときを送っていただける『最高のおもてなし』を提供できるよう日々励んでいます」
ともアピール。今回の騒動を起こした業務委託先の従業員がいくらの時給で働いていたのかは分からないが、最低ラインに近い賃金で働くスタッフが当たり前のようにいるとなると、「最高のおもてなし」をキープするのはかなり厳しいのではないだろうか。
ネットユーザーの見解、特にはてなブックマークなどを見ていると、興味深いコメントがいくつかあった。
「そもそも色んなものがかなり高い帝国ホテルでそれはないわ。安い給料じゃモチベーションは保てない。コストコより安い時給ってひどい」
「帝国ホテルは格式があって低賃金のアルバイトではなく一流のホテルマンがやってくれるのだろうと客は信じているのだろうしそういう安い商売を嫌う人が泊まりに行くと思うのだが
「人を安く使うのが当たり前になりすぎて、おかしくなってきている」
仕事に対してモチベーションの原動力となるのは、感謝や夢なんかじゃなく、お金だ。もちろん、余計なことをツイッターに投稿して職場に迷惑をかけるのは絶対にダメだが、いくらブランド力のある老舗ホテルで働いていようと、時給たった1000円で一流の接客を求められるのは辛いものがある。
低賃金で人を雇うと、不適切な人材が流入するリスクがそれだけ高まることになる。コメントにもあるように帝国ホテルは諸々のサービスが高いホテルで、顧客も富裕層が多い。それなのに時給1000円で人を使っているとうのは正直心もとない。サービス業はホテルにしても飲食にしても低賃金が当たり前のようになってきているが、これからどうなっていくのだろうか。
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