高齢者が高齢者を騙す「老老詐欺」が増えている! 「お金」「健康」「孤独」の不安につけ入る卑劣な手口 | キャリコネニュース - Page 2
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高齢者が高齢者を騙す「老老詐欺」が増えている! 「お金」「健康」「孤独」の不安につけ入る卑劣な手口

一人暮らしの石田睦子さん(仮名・72歳)は、ある日80万円もする布団の訪問販売に弱り果てていた。若い販売員に「商品が汚れた。弁償しろ」などと難癖をつけられ、恐怖におびえていると、現れた60代の男性は逆に若者を厳しく叱ってくれた。

「部下が大変失礼しました!」

そう謝罪する男性は、お詫びに布団の無料点検をしてくれるという。腰痛の悩みなど同世代談義で打ち解け、「この布団で劇的に痛みがなくなりましたよ。これも何かのご縁です」と言われ、「80万円の布団セットを30万円で」という話に乗ってしまった。

だがこれは部下役の若者が首謀者の詐欺コンビで、5~6万円の布団を30万円で売りつけていたのだ。同年代という共感性で騙しやすくするため、このように若者がシニアを詐欺仲間に引き込むケースも増えているという。

中村弁護士は老老詐欺の増加の裏に、シニアが抱える「お金」「健康」「孤独」という3大不安があるとみる。生活費はもとより、今後どれだけ医療費がかかるのか。寂しさだけではなく、1人で施設に入る不安もある。

仕事を見つけるのが難しいシニアは、ネットや居酒屋、病院の待合所や図書館などで勧誘され、お金の不安から犯罪に走ってしまう。加害者の老人も同じような不安を抱えているので「騙す側が、騙される側の心理を非常に分かっている」という特徴もあるようだ。

「相続目当て」の疑いを否定しつつ、継続的に巻き上げる

「孤独」を埋める結婚詐欺のようなケースもある。妻に先立たれ、子供たちとも疎遠で暮らす岡本栄二さん(78歳)は、寂しさからシニア専用の出会い系サイトで、夫と死別したという絹江さんと知り合い、交際をはじめた。ある日「親戚が倒れた。まとまったお金がいるの」と言われ、栄二さんは入院費や生活費など40万円をすぐに用意した。

やがて一緒に暮らすことを約束したが、娘さん(42歳)にとがめられた。絹江さんは「籍は入れない。一緒にいたいだけ」と言うものの、娘さんが調べてみると、実家には請求書の束。預金も大きく減っていた。栄二さんは絹江さんに、たびたびプレゼントや困りごとの援助をしていたのだ。

さらに「絹江」は偽名、住所も嘘。倒れたという親戚も存在しないことが分かった。家族によれば、総額600万円くらいは女性に渡しているとのことだが、本人は「騙されていない」の一点張りだ。認めてしまえば、再び孤独になるのが怖いのだろう。

こうしたケースの特徴は、相手に結婚の意思がないこと。「一緒にいるだけでいいんです」と相続目当ての疑いを否定しつつ、大金でなくとも長期間に渡って少しずつお金を手に入れたいという心理がある、と中村弁護士は分析する。

結局、騙す側も長期的にお金を手に入れたい気持ちがあることは確かだ。人の心のスキマにつけ入るのが詐欺だが、その詐欺師自体にも心にスキマ風が吹き荒れている皮肉を感じ、目の前が暗くなる。

一番大事なのは「孤独を解消してあげること」

法務省によると、詐欺事件での65歳以上の検挙者数は増加傾向にあるという。今年5月には、62歳から78歳の5人の詐欺グループが逮捕され「高齢者ばかりは初耳」と話題になった。平均年齢68歳の手口は、次のような卑劣なものだ。

ある一人暮らしの70代女性に「個人で株を購入する権利に当選したが、あなたの名義を貸していただきたい」という電話がかかってきた。「名義を貸すだけで300万円渡す」と言われ、女性は了承してしまう。

その後、国税局を装った人物から「査察が入り、捜査の手があなたにも及ぶ」と電話が。名義貸しの解約金を請求するという手口だった。恐怖を感じた女性は、指定された住所に300万円の現金を送ったという。

グループは株式投資を通じて知り合ったメンバーで構成され、電話役、現金受け取り役などの役割分担もされていた。しかしシニア詐欺の特徴は「計画が雑」なこと。なんと現金の受け渡し場所が78歳の受け取り役の自宅で、あえなく全員逮捕となった。

犯行動機を訊くと、全員口をそろえて「生活費を含めてお金が欲しかった」と言ったとか。あるメンバーは「老後の蓄えもなくなって来ただろ?」と誘われ、詐欺に加わった。中村弁護士は、周りができることとして「一番大事なのは孤独を解消してあげること。それでお金や健康に対する不安も和らいでいく」とアドバイスした。(ライター:okei)

あわせてよみたい:若者が「下流老人化」を防ぐためには

 

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