「100時間も残業させるな!」経団連前でエキタスが抗議行動 福島瑞穂氏も参戦「こんなものは働き方改革ではない」
エキタスのメンバー、栗原耕平さんのスピーチで抗議行動は幕を開けた。栗原さんが
「『月100時間の時間外残業が妥当』なんてふざけている。労働者を犠牲にするような国際競争力はいらない」
と語ると、参加者からは賛同の声が上がった。
かつて過労で倒れたことがあるという若い男性もマイクを持ち、「僕のような思いをする人を増やしたくない」と語る。かつて会社で倒れて救急車で運ばれた経験があるという。
「きっかけは不況で派遣労働者が契約を打ち切られたことでした。派遣の契約を打ち切ったのに、人員の補充はなし。全ての仕事が僕に丸投げされました。さらに同期が辞めたことも追い打ちをかけました。派遣の仕事と同期の仕事を丸ごと引き受けなければいかなかったんです。
次第に、会社のソファで寝るのが日常になっていきました。1週間家に帰れなかったこともあります。とうとう会社で倒れて、救急車で運ばれました。
いまは違う職場で働いていますが、かつてのような働き方は2度としたくありません。他の人にもこんな思いは絶対にしてほしくない。でも残業月100時間が認められてしまえば、かつての僕のような人が増えてしまいます。そんなことは許せません。
経営者はマネジメント能力に対して高い報酬をもらっているのではないのですか。労働者に100時間もの残業を強いるなんて、労働者に甘えすぎです」
福島氏も「年間720時間、月100時間の残業を認めるなんて、こんなものは働き方改革ではありません」と憤慨する。
「こんな労基法改正案が成立してしまえば、政府が残業100時間にお墨付きを与えることになります。とんでもないことです。こんなに長時間働いていたら、子どもの送り迎えすらできません。政府は少子化対策をするといいながら、家庭破壊、子育て妨害をしています
また建設労働者やトラック運転手など一部の職業が時間外労働の規制対象外になっているのもおかしい。過労死していい業種なんてありません」
「明日にでも100時間容認を撤回しろ。それができないなら経団連の会長をやめろ」
プレカリアートユニオンの清水直子さんは「労使が協力して労働者の命を守ろう」と経営者たちに呼びかけた。日本労働弁護団の嶋﨑量弁護士も「国際競争力のために100時間もの残業が必要だなんて経営者としての無能なんじゃないでしょうか」と榊原会長を批判したうえで、「労使対立を煽りたいわけではない。日本社会を前進させるためにも、残業規制が必要だ」と訴える。労働者と経営者が協力して残業規制に取り組むことが重要なのだ。
また残業時間の総量規制はおかしいと指摘する人もいた。「わたしの仕事8時間プロジェクト」の伊藤圭一さんは次のように語っていた。
「私たちは毎日休まなければ健康に働けません。後からまとめて休みが取れるからといって、まとめて働くことはできないんです。だから私たちは1日8時間の原則にこだわり、インターバル規制の導入をもとめています」
最後にマイクを握ったのは、建設業で働いているという男性。「お前は馬鹿だ。何が100時間だ、馬鹿野郎」という榊原会長への強烈な批判は参加者たちの拍手喝采を浴びた。
「そんなに残業したら生産効率が落ちる。そんなこともわからないのか。残業で国が豊かになるなら他の国もとっくにやっている。お前は無能だ。明日にでも100時間容認を撤回しろ。それができないなら経団連の会長をやめろ」
「ドライバーが寝不足で事故を起こしたら、関係のない人まで巻き込まれてしまいます」
当日は、若者から中高年まで幅広い年代の男女が抗議行動に参加していた。現在、派遣として事務の仕事をしているという20代の男性は、友人のドライバーたちが長時間労働を強いられていることに不安を感じている。
「トラックドライバーの友人は寝る時間もなく、家にも帰れずに働いています。そんな友人のことが心配です。でも友人だけの問題じゃないんです。ドライバーが寝不足で事故を起こしたら、関係のない人まで巻き込まれてしまいます。こんな働き方はどうかしている。異常です」
事務の仕事をしているという20代の男性も「過労死は他人事ではない」という。
「長時間労働は生死に関わる問題です。他人事ではないし、他人事にしてはならないと思います。それに長時間労働なんてしても集中力が落ちるだけ。効率が悪い」
抗議行動には、複数のテレビ局が取材に駆け付け、注目度の高さが伺えた。海外からもドイツのテレビ局が来ていた。日本の過労死や長時間労働について特集を組む予定だという。「日本の働き方はドイツではどのように受け止められていますか」と記者が尋ねると、「バブル時代から働き方が変わっていないようですね」と答えていた。