空港スタッフの人手不足に航空連合が対応 「空港で働くことの魅力を知ってほしい」
近年、空港利用者は増加傾向にある。国際線の旅行者数は、年々増加しており、2015年には7904万人に達した。訪日外国人も2011年以降、前年比20パーセント以上の増加を続け、2016年には2400万人を突破した。2020年には東京オリンピックを控え、ますます外国人観光客が増える見込みだ。
空港利用者がうなぎ上りに増える一方、空港では働き手が不足している。採用予定人数が集まらなかったり、採用しても定着せずに辞めてしまったりすることが多い。特にグランドスタッフ、グランドハンドリング、貨物の3職種で人手不足が深刻だ。
グランドスタッフとは、チェックインや案内を担当する空港の顔。グランドハンドリングと貨物は、手荷物の搭載や機内清掃、荷物の搭載計画立案をはじめとする業務を行う。
なぜ離職者が多いのか。航空連合の松岡宏治会長は、「一見、華やかに見えるグランドスタッフも実際にはかなり大変な仕事」と語る。
「グランドスタッフは、チェックインカウンターでの業務や出発ゲートでの業務が中心になります。華やかなイメージがありますが、実は動き回ることが多い仕事なんです。チェックインが遅れているお客様がいれば、走り回って探したり、お客様の荷物を持って走ったり。万歩計を付けていると、1日3万歩になることもあります」
またグランドハンドリングや貨物のスタッフは、「過酷な肉体労働だが、感謝されることが少ない」という。
「グランドハンドリングのスタッフは、飛行機に搭乗するときにお客様が通る搭乗橋を機体に付けたり、車両を用いて飛行機を駐機場から押し出したりします。屋外での作業ですから、夏は炎天下で、冬は雪が降る中で作業することになります。かなり過酷な仕事です。夏場には塩飴を舐めながら仕事をすることもあります。お客様と接する機会も少なく、なかなかやりがいを感じることができません」
こうした仕事の過酷さに耐えかね、離職してしまう人が少なくないのだ。
特設サイトもオープン「企業サイトには掲載できないインタビューも公開」
航空連合は、ANAグループの労働組合や成田日航ホテル労働組合など54組合が加盟する産業別労働組合だ。組合員は3万8125人で、ほとんどが正規労働者だが、非正規労働者も5.3%含まれている。1999年に結成されてから、労働条件の改善や政策提言に取り組んできた。
今後は、空港で働くことの魅力をアピールし、人手不足を解消するため、広報活動やイベント開催を行っていくという。手始めとして、4月11日に「空港の裏方お仕事図鑑2017」を開設。仕事紹介の動画や現役スタッフのインタビュー、漫画を公開している。
松岡会長は、「こうした活動を通して、空港で働くことの魅力を知ってもらいたい」と話す。
「各航空会社の企業イメージには頼らず、職種そのものに興味を持ってもらいたいと思っています。現場をよく知っているからこそ、『グローバル』といった華やかなイメージよりも、リアリティを重視して発信していきたい。
インタビューには、企業のホームページには掲載できないような率直な声もそのまま載せています。また漫画を作成するために、組合員にヒアリングをしてネタを収集しました。今回はグランドスタッフ、グランドハンドリング、貨物の3つの職種に焦点を当てていますが、今後はより多くの職種を紹介していきたいと思っています」
航空連合では、引き続きインタビューや漫画の更新を行うほか、ブロガー向けイベントでの広報活動などを行っていく予定だ。