エキタスが新宿で「最低賃金1500円デモ」敢行 雨宮処凛氏も「路上生活への直結を防ぐには、最賃向上が最短」と激励
エキタスは労働問題解決を訴え結成された団体で、大学生など若い世代が中心となっている。これまでも最低賃金1500円の実現を呼び掛けてきた。
デモはエキタスメンバーの栗原耕平氏の挨拶で始まった。働いている人に「最低賃金が1500円になったらやりたいこと」を募ったところ、「病院に行きたい」「将来の不安を払しょくするために貯金したい」「3食とって8時間眠りたい」などの声が集まったという。そして、
「理不尽な社会で、路上の怒りの声こそが僕らの希望だ」
と呼びかけると、集まった参加者から拍手が沸き起こった。応援に駆け付けた日本労働弁護団の嶋崎量弁護士は
「現行の最低賃金制度では、額の決定の際に企業の支払い能力を考慮している。これは国連からもおかしいと指摘されている。そんなことを考慮していたらいつまでたっても最低賃金は上がらない。まずは上げることが先だ。上げた後も中小企業がきちんとやっていけるようにするための方法は、税金を下げたり、下請け方法を厳しくして大企業に搾取されないようにするなどいくらでもある」
と、現状の制度の問題点を指摘する。デモの応援に駆け付けた作家の雨宮処凛氏も、「日雇い労働者たちは貯金もままならない。ゴールデンウィークなどの長期の休みで仕事が無くなると、路上生活に直結するケースもある。この問題を変える最短の方法が最低賃金の向上だと思う」と、活動の重要性を訴えていた。
労働組合の旗を解禁、最賃向上は世代を超えて共有すべき問題
今回のデモで今までと異なっているのは、労働組合の旗が多数見られたことだ。これまでのエキタスのデモでは、組合の旗を掲げることを禁止していた。解禁した理由について、先頭でラップの指揮を執っていたエキタスメンバーの小林俊一郎さん(大学3年生)は
「今まで最低賃金の向上は若い人たちだけの問題と捉えられがちだった。労働組合の人たちが旗を掲げて組織として参加することで、街の人に、世代を超えた問題だと認識してもらえるのではと思った」
と説明した。実際、今日の参加者には社会人や年金受給者などが多く、老若男女が問題意識を持っていることがうかがえた。
参加者の一人で大学院に通う女性は「防犯面を考慮して住居を選ぶと、生活費も合わせて月々15万円くらいの出費が必要」と現在の出費状況を語り、「最低賃金が1500円になれば、労働時間も短くなって勉強に集中できる」と希望を訴えた。
沿道の反応は「上げたっていい」「高すぎる」など賛否両論
一方で、沿道で見ていた人たちの反応は芳しいものばかりではない。「上げたっていい。今が安すぎる」という60代の路上生活者の男性がいるかと思えば、
「1500円はちょっと高すぎる。上がるに越したことはないけれど、その分、国も豊かにならなければいけないし、難しいと思います」
と話す50代女性もいる。20代の社会人男性は「こんなことする暇があったら働けばいいのに」と、冷ややかだ。
こうした声に対し小林さんは
「問題の認知が足りていないのは僕たちの責任。デモを見て、賛成でも反対でも、何かしら意見を持った人には、エキタスのツイッターやホームページを訪れてほしい。そこではこれまでの主張の背景もまとめてある」
と、対話への意気込みを見せた。
今日のデモは東京だけでなく、札幌、松本、名古屋、京都など、全国各地で行われた。フランスやアメリカの報道機関も詰め掛けるなど注目度は高い。冒頭であいさつした栗原さんは今回のデモを
「前回と比べて参加人数も増えたし、若い女性が途中で沿道からついてきてくれたり、反応がすごくよかった。自分の問題として集まってくれた人が多かったのでは」
と振り返り、手ごたえを感じているようだった。