パチンコ依存症対策で「使いすぎたら声をかけられる」プログラムが広がる 上限超えで会員カード一時停止、効果はある?
パチンコやスロットなどギャンブル依存症が問題になっている。そんな中、パチンコ業界の中では依存やのめり込みを防ぐ「自己申告プログラム」を導入する店が増えている。
利用者が1日に使用する上限金額を設定し、会員カードの情報とホールの会員管理システムからその日の使用金額を集計する。上限額を超えると、次の来店時に会員カードが使用できなくなる。
店舗スタッフは上限額が超えていたことを伝え、利用者は退店するか、カードのエラーを解除して遊技するかを選ぶ。
同プログラムは「適度に楽しみたい」と考える利用者の声を受け、ホール団体や遊技機メーカー団体など14団体から成る「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」の依存問題プロジェクトチームが考案した。
あくまでも「申請者本人のその時点での意思を尊重する」
パチンコホールを展開するダイナムでも6月5日、「自己申告プログラム」が導入された。対象は全国46都道府県、61店舗で今後も増えていく予定だという。
しかし、今年4月から試験的に3店舗で導入を行ってはいたが、現段階で申込数はゼロ。厳しい状態からのスタートとなっている。店内でもポスターなどで告知はしているものの同社担当者は「特定人物に積極的に声掛けをしていくものでもない」と話す。
「仮に1日の上限を超えたお客様がいたとしても『これ以上はやめてください!』と強く言ったり、入場禁止にしたりするものではありません。参加はお客様の自主性にお任せしています」
このプログラムがのめり込み抑制として有効か聞くと「現段階では何もいえない」とのことだ。現に2015年に発表された「自己申告プログラムのご案内」によると、上限額超えを告知された当日の遊技については、「申請者本人のその時点での意思を尊重する」とあり強制力はない。
マルハン「抑止力にはなっている。パチンコ依存症の人はぜひ利用して」
一方で、マルハン広報担当者は同プログラムについて、「パチンコ・スロットを『辞めたい』という人ではなく『限度を守って楽しみたい』という人には有効」と話す。
同社は2016年に1店舗でプログラムの先行導入・検証を行い、今年4月に45店舗に拡大した。検証時の参加者は4人、現在は7人が利用している。先行導入から約1年経った今、「声掛け」をしたのは1件のみだという。
「自発的に申し込みをされた方ばかりなので『使いすぎない』という意志が固い人が多いのだと思います。ただ報告によると一度お声掛けをしており、そのときはお客様の意志を尊重してそのままご滞在いただいたようです」
業界全体として依存に対する取組みは行っているが、その中でも「使いすぎたら知らせてほしい」というニーズは少ないのかもしれない。しかし担当者は「のめり込みへの抑止力にはなっていると思います」と語る。
ただ自分を依存症だと思っていない人や、のめり込みを深刻なことだと認識していない人にとってはその限りではない。同担当者は「パチンコ依存症の人にぜひ利用してほしいです」と語る。
「やはりパチンコやスロットは娯楽やリフレッシュの範囲で遊んでいただきたいです。現在、利用者本人しかプログラムの参加申請を行えません。しかし今後、家族でも申請できたり、回数や時間なども上限を決められたりできるようになる可能性もありえます。依存症対策のために企業としても積極的にトライしていきたいですね」
前出のパチンコ・パチスロ産業21世紀会によると、自己申告プログラムは現在、全国約780店舗の店舗が実施。利用者は約20人とまだまだ少ない。果たしてどの程度普及するだろうか。