「全成人に現金8万円のベーシックインカムを」民進党新人のブログ話題 「財源は?」「その分税金取られる」と懐疑的な声も
民進党新人がブログで「すべての成人に月8万円の現金を配布するベーシックインカム」と提案し、ネット上で話題になっている。提案したのは、松尾勉氏(32)だ。
松尾氏は東京大学を卒業し、2007年に環境省に入省。2014年に退職して細野豪志氏の秘書となり、現在は民進党の公認内定候補者として、次期衆議院選での当選を目指して活動している。
消費税を20%にして財源確保、配偶者控除や最低賃金は廃止
ベーシックインカム(以下BI)とは、就労の有無や資産の多寡を問わず、全ての個人に一定額の生活費を給付する制度だ。年金や失業保険などは、年齢や就労期間などで給付制限がかかっているが、BIは無条件に与えられる。
全ての人に最低限の生活費を給付することで、どんな人でも最低限度の生活が保証されるなど、貧困解消に向けてメリットがあると言われる。一方で、制度を導入した場合の財源確保や、人々の勤労意欲の低下への懸念など、デメリットも指摘されてきた。
松尾氏は7月4日のブログでBI導入を提言。月8万円とした理由を
「年金(基礎年金が月約6万5千円)や生活保護を念頭におきつつ、税による追加負担軽減も加味した結果、現時点ではこの額となりました」
と述べ、決して根拠のない数字でないことを強調した。公務員給与の削減、生活保護制度や基礎年金の廃止といった行政の改革と、消費税、法人税の変更で財源を確保すると提案している。消費税は、現行の8%から20%に引き上げ、そのすべての税収入をBIに充てる。法人税は、新たにBI税を設立し、配偶者控除や最低賃金の廃止なども訴えていた。
ブログの文章がヤフーニュース、ハフィントンポストなどに転載されると、ネットでは様々な反応が巻き起こった。「インフレになる」「財源はどうするの?」といった声や
「ベーシックインカム税とか消費税とかでごっそり持っていかれそう」
など、多くは懐疑的だが、
「ベーシックインカム制が導入されたら良い。過度なストレスが原因の自殺や凶悪犯罪が減るし最低限の生活の心配が無くなれば、研究者や芸術家はもっと能力を磨くと思う」
という肯定的な意見も少数ながら聞かれていた。
過去にはホリエモンも提言「政府からお金もらって好きなことやってればいいじゃん」
BIは、ヨーロッパを中心に導入の議論が行われてきた。スイスでは、2016年にBI導入の機運が高まったが、国民の反対多数で実現には至らなかった。多くの人が気にかけたのが、財源の確保や労働意欲の低下に伴う働き手の減少などだった。
一方、フィンランドは今年1月1日から2年間、2000人の失業者に毎月560ユーロ配布する試みを始めた。BIの本格的な導入に向け、指摘されている「勤労意欲の低下」などが本当に起きるか、実験的な意味合いもあるという。
日本では、松尾氏のほかにも導入を訴える人は多い。堀江貴文氏は2009年に自身のブログでBIについて言及し、
「多くの人は労働信仰に支配されて嫌々働いているんじゃないかと。だったら、政府から金もらって好きなことやってればいいじゃん。私みたいなワーカホリックは放っておいても働くよ。むしろ雇用を創出したりとややこしいことを考えなくて済む分、便利なものとか新しい事業とかを立ち上げる事に集中できて生産性があがるんじゃないかな」
と、メリットを語っていた。日本で実現するには国民の合意が不可欠だ。まずは世界各国での議論の様子や実験の結果を、注意深く見守る必要性があるだろう。