若者の「酒離れ」は本当に起きているのか そもそも日本人全体の飲酒率がこの30年で減少傾向
車、果物、海など、若者の〇〇離れはあらゆるところで起きていると言われている。一部ではお酒も例外ではないと囁かれているが、本当に「若者の酒離れ」は起きているのだろうか。
日本酒造組合中央会は今年5月、「日本人の飲酒動向調査」の結果を発表した。調査では、若い世代と高齢世代との消費場所の違いや、今後お酒とどう付き合っていきたいかといった意向の差が明らかになった。
自宅外での飲酒は若い世代ほど多い傾向 理由は「誘われる頻度が増えた」から
同調査は1988年に行われて以来、約30年ぶり2度目の実施だ。全国の20~79歳の男女を対象に、今年1月に行われた。
飲酒習慣に関して若年層と高齢層で比べて見ると、飲酒場所に違いがみられる。20代・30代の1か月の自宅飲酒頻度は、それぞれ月平均9.3回と11.4回で、全年代の中で最も回数が少なくなっている。一方、自宅外での飲酒頻度はそれぞれ5.5回と4.6回で、こちらは逆に、全ての年代の中で最も回数が多い。
また、20代の飲酒者のうち、今後飲酒を「増やしたい」人、直近1年間で飲酒が「増えた」人は、それぞれ12.1%、22.6%と、全世代の中で唯一10%・20%台に達していた。新しいお酒を試してみようという意向のある人の割合も、20代で41.1%、30代で38.8%といずれも平均より高くなっている。
お酒に親しみたい20代が多いのなら、若者の酒離れは進んでいないと言いたくなるかもしれない。しかし、直近1年間で飲酒が増えた理由の1位に20代が挙げているのは「誘われる頻度が増えた」で、お酒そのものへの興味関心が向上した訳ではない。就職や転職などで生じたコミュニケーションの機会を大事にしているだけとも捉えられる。また、飲酒経験の少ない若い世代で、新しいお酒を試そうとする意向が相対的に高くなるのは、ある意味当然だろう。これらを元に、若者の酒離れを否定するのは難しそうだ。
男性の飲酒率は70%から53%まで大幅に低下
今年3月に東京都生活文化局が発表した調査では、20代男性の飲酒頻度で最も多かったのが「週に1~2日」(32.6%)、次いで「飲まない・飲めない」(25.3%)と、飲酒に消極的な様子が見て取れた。50代、60代で「毎日飲む」が最多だったことと比較すると、大きな違いがある。20代女性では「飲まない」が34.2%で最も多く、次が「週1~2日」(30.4%)だった。
ただ、お酒をたしなむ人が少なくなっているのは、若者に限ったことではないようだ。日本酒造組合中央会の調査では、1988年と現在の飲酒率の違いについて明らかにしている。男性の飲酒率は70.7%から53.6%まで大幅に下落し、女性の飲酒率は31.6%から微増して32.9%だった。日本人全体では50.6%から42.7%まで減少していた。
全年代を通し、過去1か月で購入した酒類で最も多いのはビールとのことだが、7月12日には、2017年上半期のビール類の出荷量が5年連続で過去最低を更新したと時事通信などが報じている。進んでいるのは「若者の酒離れ」ではなく、「日本人の酒離れ」ではないだろうか。
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