日比谷線でBGM音楽、どんな感じか乗ってみた 車内放送には影響なし、クラシックはほぼ聞こえない
流れるクラシック音楽は、ドビュッシーの「月の光」、ショパンの「ノクターン」、メンデルスゾーンの「春の歌」と、すべてピアノ曲。ヒーリング音楽は、すべて作曲家のMitsuhiro氏による「朝空を開いて」「そよぐ緑」「陽を浴びて」の3曲で、どれも落ち着いた曲調のものだ。
試乗列車は11時30分頃に南千住の車両基地を出て、11時51分に南千住駅を出発し、霞ヶ関駅まで向かった。南千住駅から人形町駅まではクラシック音楽、その先はヒーリング音楽を流して走行した。
基地内に停車し電源が入っていない間は、騒音も少ないためよく聞こえる。南千住駅は地上にあるが、ここから地下にある三ノ輪駅方面へ向かう間、走行音があっても音楽を聞き取れた。
しかし、地下に入ると走行音にかき消されて、旋律を追う事はままならない。減速時や停車中に気付く程度で、ほとんど気にならなかった。停車の度に曲の一部が中途半端に聞こえるので、一曲通して聞けないことにストレスを感じる可能性はあるが、概ね不快には感じない。音量も、読書やスマホでの映像視聴には影響なさそうだった。
ただ、ヒーリング音楽は事情が違った。音量はクラシック音楽と同じはずなのに、より耳に入ってくる。音は多い。また、クラシック音楽の場合は走行中にスピーカーの真下にいても気にならなかったが、こちらは音の動きを把握できるくらいはっきり聞こえる。
心中が穏やかな時には良いかもしれないが、考え事をしたかったり心配事があったりするときには気になりそうだ。聴きたくない場合には、スピーカーから離れた場所に座ると、少し気休めになるかもしれない。読書をしようと試みたが、音楽で気が散って、いつもより内容が頭に入らなかった。
試乗列車は12時17分に霞ヶ関駅到着後、通常の営業列車として利用客を乗せ、上野駅まで向かった。乗車した車両の編成番号が偶数だったためヒーリング音楽が流れていたが、乗っているお客さんに、特に気にしている様子は見られない。上野駅で降りた60歳代の女性に車内BGMについて感想を聞くと「友達とのおしゃべりに夢中で気づかなかった」と話していた。
ただでさえ音が溢れる駅・電車に、これ以上音を増やす必要はある?
BGMは、車内放送を邪魔するほどの大きさではなかったが、音楽は個人の好みが分かれる上、その時の気持ちによって聴きたい曲も変わる。それを踏まえると、この取り組みにはやや懐疑的だ。憂鬱な時に優雅な音楽を聞く気持ちにはなれないし、音楽を聞きたくないのに耳に入ってくる状況は、いくら好きでも耳をふさぎたくなる。
また、補聴器使用者や聴覚過敏の人に配慮する必要もありそうだ。駅のホームは、ただでさえ発車ベルや駅員の放送などが溢れている。そこに新たに音が加わることがどのくらい影響するのかは検証すべきだろう。
東京メトロは今後の運用について、「お客様の声・お客様モニターの声を参考に検討する」としている。