サマータイムに気象予報士も反対 「時間を繰り上げても気温は1~2度しか違わない。アジアでは気候的に無理」「意味がない」
気象予報士の森田正光さんは8月15日、ラジオ番組「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ)で、サマータイムは「意味がない」と断言した。北米と違い、アジアでは1~2時間繰り上げても気温がそれほど変わらないため、システム変更等のコストに見合うだけの利点がないという。
視聴者からの質問で「サマータイム導入は是か非か」と聞かれた森田さんは、「非ですね。個人的には意味がないと思っています」と断言した。
「朝の時間を活用しようとか、涼しい時間に何かしようとしたって温度は一緒、湿度も高い」
「そもそも論で言うと、日本にサマータイムは向いていないということがあります。欧米と季節が違う。元々の導入はイギリスですよね。100年くらい前にイギリスの建設業の方が考えたそうです。昼が長いので有効に使おうということでやったのが始まりなんですね。100年くらいの歴史があるんです。日本では戦後、進駐軍が来て4年間くらいサマータイムをやったんですね。ところがもう皆寝不足でダメになったっていう経過があるんです」
日本では、GHQに占領されていた1948年に夏時刻法が成立し、時計を1時間進めた時刻が使われていた。しかし4年後の1952年には廃止されている。
韓国でも1988年のソウルオリンピックに合わせて、87~88年の2年間だけサマータイムが実施された。しかし「季節的に無理」という理由で廃止されたという。この「季節的に無理」というのは、時間をずらしても暑いから意味がないということだ。
「暑すぎるんです。2時間やそこらずらしても一緒だということです。実際に2時間ずれて朝の7時が5時になっても1~2度しか違わないんですよ、最大で。昼の時間はどの時間帯でも暑いわけです。結局は、朝早い時間を有効活用しようとか、涼しい時間に何かしようとしたって温度は一緒で、湿度も高い。アジアでは気候的に無理」
気象庁によると、今年の8月14日の気温は午前5時に24度、午前7時に25.7度だった。15日は午前5時が27.4度、午前7時が29.2度となっている。2時間早起きしても、気温に大差はないのだ。
そのため森田さんは「導入する時にシステムを変更するとかコストが掛かるじゃないですか」と労力が必要な割に見返りが少ないことを指摘していた。
フィンランドでは7万人の署名を受けて政府がEUに廃止を提案
番組パーソナリティの森本毅郎さんは「イギリスでも100年経った今、見直し論が出ているという話がありました。(中略)睡眠障害の影響も出てくるという話ですから」と指摘した。
現在、EU加盟国では共通の夏時間「デイライト・セービング・タイム(DST)」を導入している。3月の最終日曜日から10月の最終土曜日まで時計を1時間進めるというものだ。
しかしフィンランドでは7万人の署名を受けて、今年1月に政府がEUに廃止を提案した。リトアニアでも17年12月、政府とEUが廃止に向けた協議に入っている。フランスやドイツ、ラトビアでも世論調査で過半数が夏時間に反対しているという。
健康への悪影響も指摘されている。睡眠不足になり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まったり、判断力の低下で交通事故が増える可能性があるという。
日本では奈良県が2012年から、開庁時刻と閉庁時刻を30分繰り上げるサマータイムを実施していた。東日本大震災後、節電のために始まったものだが、職員から不評だったため、2017年に廃止している。