受刑者がスタッフのコミュニティカフェが都内にオープン 「出所者が立ち直るためには居場所を作ることが必要」
法務省が2015年に発表した資料によると、出所者の5人に1人が2年以内に再び刑務所に収容されている。刑務所に戻ってきた人のうち、再犯をした時点で無職だった人の割合は70%以上に上る。
五十嵐さんによると、家族と疎遠になっていたり、頼れる人がいなかったりすると、出所後も刑務所内で築いた人間関係に頼ることになり、再犯に繋がりやすいという。再犯を防ぐためには、支えてくれる人の存在が必要だ。五十嵐さんは、スペースの意義についてこう話す。
「孤独になったり、悩んだりした時に、皆で話せるスペースにしたい。出所者も社会の中でつながりを持ってくれる人がいれば、変わっていくことができる。また、様々な問題を抱えた人にも来てほしいと思っています。いじめや虐待、障害者、性同一性障害の人、自殺を考えている人……どんな人でも『ここにいていいんだ』と思えるような居場所にしたい。お互いがお互いを大切にするような愛にあふれる場所にしたいんです」
また一般の人には「出所者も同じ人間」だということを理解し、1人の人として向き合ってほしいという。
「多くの人は受刑者はおっかないという偏見を持っています。しかし受刑者も同じ人間なのです。ここに来て出所者と接することで、そのことをわかってほしい」
出所者の就労支援事業や「ラブレター・プロジェクト」を運営
五十嵐さん自身が詐欺などで過去に3度服役し、合計で約20年間刑務所の中にいた。3度目の服役中にクリスチャンと交流して信仰に目覚め、カトリックになったという。
2011年12月に出所し、2012年にマザーハウスを立ち上げた。他の受刑者から「私には帰る場所がない」「出所しても行く場所がない」という言葉を聞き、当事者が当事者を支援する団体が必要だと感じたからだ。
マザーハウスは、出所者の就労支援事業として、ルワンダから輸入したコーヒー豆の販売や不良品処理、便利屋サービスを行っている。また更生支援の活動として「ラブレター・プロジェクト」がある。全国に約200人いる文通ボランティアが、受刑者と手紙のやり取りをし、更生に役立てるという。