空前のカワウソブーム受け自然保護団体が警鐘 「密輸された個体が販売されている可能性。そもそもペットに向かない。購入控えて」
近年、カワウソの人気が高まり、ペットとしての需要が急騰している。しかし日本で販売されているカワウソの中には密輸された個体もある可能性が高いという。
世界自然保護基金ジャパンは10月19日、「日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要の緊急評価」という報告書を発表した。同基金の担当者は「密輸されたカワウソが販売されている可能性があります。そもそもカワウソはペットとして飼うのがとても困難で、購入は控えてほしい」と話す。
「野生のカワウソを捕獲したのに、繁殖施設で生まれたと虚偽の報告をしている可能性」
日本では今、空前のカワウソブームが起きている。今年9~10月には「第2回カワウソゥ選挙」が開催された。全国の動物園・水族館が飼育している計83頭のうち、どのカワウソが最も人気なのか投票で決めるというものだ。
カワウソと触れ合えるカフェも増えている。同基金の調査によると、少なくとも10か所で計32頭が展示されていたという。秋葉原観光推進協会の公認キャラクター「ちぃたん☆」もコツメカワウソがモデルになっている。
ブームの追い風もあり、日本では現在、コツメカワウソが一頭100万円以上で売られている。こうした中、出処が不明確なまま、販売されているカワウソも少なくないという。同基金の担当者は「密輸されたカワウソが販売されている恐れもある」と話している。
「今回は輸入販売事業者も対象に調査を行いましたが、カワウソがどこから来たのか、きちんと把握している事業者は少なかったです。輸出国側で輸出許可書を作成するのですが、そこに記載されている由来が本当なのかどうか疑わしいこともあります。野生のカワウソを捕獲したのに、繁殖施設で生まれたと虚偽の報告をしている可能性もあるのです。日本政府はこうした輸出許可書に基づいて輸入を認める時に、きちんと確認してほしいと思います」
カワウソの中でも特によく知られているコツメカワウソは、国際自然保護連合(ICUN)によって絶滅危惧II類に分類されている。東南アジアでは農地開発等で個体数が減少する中、密輸が盛んになれば、ますます減少する恐れがある。
テレビが誤解を広げた? 「志村動物園」の影響でコツメカワウソを飼い始めた人も
カワウソ人気に火を付け、家庭でも気軽に飼えるという誤解を与えたのが、テレビ番組やSNSだ。前出の担当者は、
「『天才!志村動物園』が、犬や猫と同じように、カワウソも家庭で飼えるという印象を視聴者に与えてしまったのではないかと思います。『生き物にサンキュー!!』も、飼い主を取り上げることで『飼えるんだ』という誤解を与えた可能性があります」
と指摘する。「志村動物園」では、タレントの青木さやかさんがカワウソの子供を連れて旅をするコーナーがあった。こうしたカワウソを擬人化するような企画が、実際よりも身近な生き物であるという印象を視聴者に植え付けた可能性がある。
実際、SNSにペットのカワウソの画像をアップしている飼い主7人に、同基金がカワウソ購入の動機を聞いたところ、2人が同番組から影響を受けたと語ったという。
他にも、人気ユーチューバー・ヒカキンさんがカワウソカフェに行く動画や、フォロワーが3万人近くいる「カワウソさくら」のTwitterアカウントの影響が大きいという。
「SNSにアップされた短い動画や写真は、カワウソの可愛い部分ばかりを取り上げており、そこに写らない部分があることが忘れられています。カワウソは、野生生物で簡単に飼えるものではありません。飼育には60平方メートルのスペースが必要だと言われていますし、水陸両方の環境を整える必要があります。そもそも2~3家族、計10頭くらいで生活する生き物ですので、一頭でいること自体がストレスになることも。ペットとして飼うのはとても難しい生き物です」
出処が不明確な上に、飼育が難しいカワウソ。担当者は「購入は控えてほしい」と訴えていた。