そこまでやるか、ビル・ゲイツ! 「排泄物」を飲み水に変える浄水装置を開発
慈善事業に熱を入れているビル・ゲイツが1月5日、とある浄水装置の完成をYouTubeで発表しました。人間の排泄物から飲み水を作る画期的なもので、動画の中でゲイツは5分前まで排泄物だったものから作られた水を飲んで見せます。
このニュースを1月13日付のライブ・サイエンス誌が取り上げました。この浄水装置「オムニプロセッサ」を開発したジャニッキ・バイオエナジー社はワシントンに本社を置き、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団から資金提供を受けているそうです。(文:夢野響子)
10万人分の下水を処理。装置に必要な電力も生成
ゲイツによれば、世界で少なくとも20億の人々が下水施設の整っていないトイレを使っており、トイレがないため外で排泄しなければならない人々もたくさんいるといいます。
不適切に処理された排泄物は飲料水を汚染し、毎年70万人の子どもが亡くなる病気の原因となり、さらに多くの人々の物理的・精神的発達を妨げています。
とはいえ問題を解決するために、西洋風の下水道設備や汚水処理を完備させようとするのは、貧しい国々にとって実行可能な選択肢ではありません。しかし「オムニプロセッサ」のような汚水処理機なら、そのような場所でも稼動することができます。
長さ約23メートル、幅8メートルのこの装置は、約10万人のコミュニティの下水に相当する毎日約14トンの廃棄物を継続的に処理し、1日当たり8万6000リットルの飲用水と250キロワットの電力を生み出します。
その仕組みは、次のようなものです。機械に取り込んだ下水汚泥をベルトコンベヤーで大型チューブの乾燥機に送り込み、セ氏1000度で燃やします。そしてすべての液体を水蒸気として取り込み、高度に処理して飲料水にします。
また、固形廃棄物は焼却炉へ送り込まれ、高度の熱を作り出します。そして蒸気エンジンを介してオムニプロセッサの稼動に必要な電力を供給し、余分にできた電気は送電網にも送ることができます。いわば「自立マシン」といえるでしょう。
「捨てる神あれば、拾う神あり」と自画自賛
「オムニプロセッサ」は近い将来、西アフリカのセネガルの首都ダカールでの試験的プロジェクトで使われ、ジャニッキのエンジニアが現場で操作を行います。最終的には地元の起業家に約150万ドル(約1億7500万円)で販売されることになっています。
この試運転によって、新たな環境での稼動や地元とのコミュニケーションに加え、米国のエンジニアが機器を遠隔操作するためのセンサーやWebカムもテストします。ゲイツはブログにこう書いています。
「このプロセッサが広く使用されるまでには、何年もかかるかもしれないが、私はジャニッキのエンジニアリングに本当に感動した。そして、そのビジネスモデルに興奮している。このプロセッサは人間の排泄物を、市場での価値を持つ商品に変える。これは『捨てる神あれば、拾う神あり』(One man’s trash is another man’s treasure.)ということわざの究極の実現だ」
なおゲイツは昨年3月、妻のメリンダ夫人とTEDフォーラムに登壇し、「私たちの富を寄付することがどうして一番満足を得られたことなのか」というタイトルでこれまでの慈善事業について熱く語っていました。今後もさまざまな社会問題の解決法を生み出してくれることを期待したいものです。
(参照)Steam Machine Turns Poop into Clean Drinking Water (LiveScience)
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