別府市の杉乃井ホテル、10日間連続休業 「いい人材を獲得するためにはしっかり休めるようにする必要がある」
大分県別府市の「別府杉乃井ホテル」は2019年1月15日から10日間連続で休業することを明らかにした。
杉乃井ホテルは別府八湯のひとつである観音寺温泉にある。客室総数は647室で年間宿泊者数は70万人。従業員数は約800人で、別府を代表する巨大ホテルとして知られている。
正月休みと成人の日を含む3連休が終わると、宿泊客の数が一段落する。このタイミングで従業員が長期休暇を取得できるようにし、人材獲得につなげる狙いだ。
長期休暇には自由参加の研修旅行を実施 シンガポール、マカオ、グアムから選択
ホテル業界ではシフト制で休みを取るため、従業員が家族や友人と休みを合わせづらい。加えて、まとまった休暇は取りづらい。そのため大学卒業後3年間の宿泊・飲食サービス業における離職率は30%(2017年)に上る。産業全体の14.9%の2倍だ。
ダイレクトマーケティング部の東健治さんは、
「人手不足のなか、いい人材を獲得し、働き続けてもらうためには、給与を上げるだけでなく、しっかり休めるようにする必要があると考えました。売り上げは減ってしまいますが、避けられない潮流だと思っています」
と話す。実際、昨年10日間休業を始めてから、採用への応募が約20%増えたという。
これまでも杉乃井ホテルでは、5日間の連続休業を実施していた。風呂の清掃や温水プールの水を一度抜いてメンテナンスをする必要があったためだ。
この期間に海外の研修旅行を実施していた。自由参加で、会社が費用の6割を負担するが、この研修旅行に行くと、それだけで休暇が終わってしまうという問題があった。そこで連続休暇を10日間に伸ばすことを決めたという。
「この研修旅行は今後も続けるつもりです。来年はシンガポールかマカオ、グアムのうちから行きたいところを選んでもらうつもりです。この4日間の研修旅行に参加しても、その後ゆっくり休むことができますし、研修には参加せずに10日間自由に休んでもらっても構いません」
昨年から始めた10日間連続休業。従業員は当初「本当に実施するのか」と半信半疑だったが、今では連休を歓迎しているという。
ネットでは、「年中無給(原文ママ)が当然な旅館業でこの決断は凄い」「他の休みが取りにくい業界にも広まる事を願います」と杉乃井ホテルの決定を称賛する声が相次いでいる。