筑波大医学生ら、医学部不正入試問題で署名活動開始「文科省は大学名を公表して」「不正の影響で来年度の定員が減るのは理不尽」
順天堂大学は12月10日、2017年と2018年の医学部入試で、女子と浪人生を不利に扱っていたことを明らかにした。東京医科大学を発端に、今年は複数大学での医学部入試不正が公になっている。
こうした中、医学部不正入試に関する文科省の対応に不満を持つ医療系の学生らは12月2日、学生団体「入試差別をなくそう!学生緊急アピール」を立ち上げた。団体は同日から署名サイト「change.org」上で、「【入試差別をなくそう!一万人署名】文部科学省は不正入試を行った大学を公表してください!」と、文科省に大学名を公表するよう求める署名活動を始めた。12月11日17時時点で、約1600人が賛同している。
「受験生はどの大学が不適切な入試を実施していたか分からないまま受験を強いられる」
文科省は今年夏から秋にかけて、東京医科大学での不正入試問題を受け、医学部医学科を持つ全国81大学を対象に調査を行った。その後、10月12日までに、30大学に対して訪問調査を実施。23日の中間報告では、「書類審査の際に現役生に加点し多浪生に加点しない事例」、「浪人生や女性は面接試験等でより高い評価を得ないと合格としない事例」など、不適切な入学試験の実施が疑われる大学があることが判明した。
しかし、文科省はこれらの大学について、調査継続などを理由に名前を公表せず、大学による自主公表を求めた。学生団体はこの対応について、
「差別的な入試や不正を行っていた当事者である大学の内部調査では客観性に乏しく、信頼性が確保できません」
と指摘する。
「文部科学省によるこれまでの調査報告は非常に不十分であり、早急に不適切な事例に該当する大学を公表し、第三者委員会の設置を促すべきです。来年度の入学試験が迫る中、現在の受験生はどの大学が不適切な入試を実施していたか分からないままに志望校の選択を強いられる状況であり、その側面からも一刻を争う事態といえます」
「医学部の女性差別は巡り巡って男性の命も軽んじている。女性だけの問題ではない」
団体は、不正入試で不合格になった受験生の追加合格に、次年度の入学生の枠が使われることの問題点も指摘している。東京医科大は不正入試で不合格になった受験生のうち、44人を追加合格させた。44人の受け入れには来年度の枠が使われるため、来年度の一般入試の募集枠は、75人から34人へと大幅に減少している。
このため団体は、「元受験生の被害救済のため、東京医科大学を含め不適切な入試を行っていた大学の追加合格措置は必要」だが、「それによって来年度受験生が不利益を被るなどということがあってはいけません」と主張している。
「来年度の受験生も例年と同じように、医学部を目指し必死に勉強してきた受験生であり、大学による不正のあおりを受けて来年度分の定員が減らされるのは全くの理不尽です」
これらのことから文科省に対し、元受験生の救済に加え、これからの受験生に対する緊急措置として、医学部定員の一時的な増加などを求めている。このほか、「各大学に、不適切な入試が疑われる期間における元受験生の得点を、元受験生の要求に応じて開示させること」なども要求している。
署名に賛同した人たちからは、
「賛同します。ものすごくものすごく腹が立つ。自分たちの世代だけでなく、今の若い子たちにまで公然と差別があって、それを止められなかった。今からでも止めたい」
「結婚や出産によって女性のみが離職するのが前提の社会は、男性は所属団体に従順でなければいけなく、死ぬまで奴隷の様に働かされる社会と表裏一体です。医学部の女性差別は巡り巡って男性の命も軽んじる結果となっており、もう女性だけの問題だとは思えません」
などのコメントが集まっている。集まった署名は、柴山昌彦文科相と、文科省・高等教育局大学振興課大学入試室に提出される予定だ。