「負け組」遊園地の再生に乗り出す 旅行会社エイチ・アイ・エスの戦略
全国のテーマパークや遊園地の売り上げは、ここ数年、右肩上がりで推移しているそうだ。しかし施設ごとに見ると、勝ち組と負け組で明暗が分かれており、施設数はこの20年で3分の1にまで減少している。
2015年1月27日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、少子高齢化や老朽化の波に逆らえず苦境に立った地方のテーマパークや遊園地を、大胆なアイデアで蘇らせる大手旅行会社エイチ・アイ・エスの取り組みを追っていた。
日本初のイベントなど矢継ぎ早に対策実施
愛知県蒲郡市にある「ラグーナ蒲郡」は、中世ヨーロッパの海辺をイメージした総合レジャー施設。しかし連休中でもガラガラで、お客は「アトラクションに魅力を感じない。一度来れば十分」と厳しいホンネを明かす。
2002年に開業し、名古屋からの客を見込んでいたが、近隣の遊園地やUSJとの競争もあり、年々入場者数が減少。昨年末には77億円の負債を抱え経営危機に陥っていた。その建て直しに、地元の要請でエイチ・アイ・エスが乗り出した。長崎ハウステンボスを再生させた実績を持つ澤田秀雄会長は、昨年6月の発表会見でこう語った。
「地元の活性化、観光の活性化、ひいては雇用のお手伝いができるなら、頑張ってチャレンジしようじゃないか」
新社長として指揮をとるのは、エイチ・アイ・エスで営業本部長としての手腕を買われた巽泰弘さん(45歳)だ。夏の巨大プールしか集客がない現状を打破し、幅広い年齢層が1年中、夜まで楽しむことができる施設を目指した。
9月から「世界のビールとワインまつり」を仕掛け、駅から無料送迎バスを出して仕事帰りの大人を呼び込んだ。まずいと悪評のレストラン業者を切り、ハウステンボスで一番人気のピザレストランの直営に切り替えた。
さらに3億円を投じ、建物の壁面に立体的な映像を浮かび上がらせる3Dプロジェクションマッピングを企画。四方を建物に囲まれた広場を生かしたもので、360度は日本初の試みだ。
遊具を買い取りアジアに販売する会社も登場
魅力あるイベントを矢継ぎ早に投入するのが、エイチ・アイ・エスのやり方だ。ハウステンボスの再生でも、日本一のイルミネーションや日本初のシューティングゲーム、元宝塚の本格的なレビューが見られる「ハウステンボス歌劇団」など、あの手この手で客を楽しませた。
集客数はこの5年で2倍増、創業以来続いていた赤字経営をわずか1年で黒字化した。澤田会長は成功の秘訣を「独創性が必要。楽しい、よかったなと思ってもらうものを作っていかなくてはならない」と語る。
11月、ラグーナ蒲郡は「ラグーナテンボス」と名称を変え、入場料を500円値上げしながらも、普段の10倍以上の集客があった。エイチ・アイ・エスは総力をあげてツアーを組み、多くのバスツアー客が訪れたのだ。
美しい色彩の3Dプロダクションも成功し、12月の集客は1年前の2倍に伸びた。秋冬のイベントで結果を出すよう澤田会長から釘を刺されていた巽社長はホッとした様子で「これからもいろんなコンテンツを入れてアピールしていきたい」と語った。
番組では、閉園した遊園地からジェットコースターや観覧車などを買い取り、整備・修理して格安販売する大阪の岡本製作所も紹介した。アジアの遊園地などで需要が伸びているそうだが、国内の遊園地再生にも一役買っている。絶叫マシーンでなくとも目新しい遊具を入れることで、家族連れが十分楽しめて集客にもつながっている様子だった。
レジャー施設は遊び場というだけでなく、思い出作りの場、雇用の場でもある。地方を元気にすることにつながる遊園地が消えないためには、常に新しいことを仕掛けていかなくてはならないが、なんとか生き残って欲しいと感じた。(ライター:okei)
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