世田谷区民は高所得、高学歴、仕事上の地位が高い高職位の”3高”傾向が強く、同区の高齢者の就職率は23区中17位とあまり高くない。優良企業に勤めていたため蓄えが充実している人が少なくなく、早々に仕事を辞めても再就職する必要もないことが要因だろう。
「(退職後は)『趣味に生きようか』という話になるんですけど、老人クラブの加入率を見てみると23区中22位なんです。(プライドが高いため)近所の人達とつるんで一緒に楽しめない」(池田氏)
例えば、大手企業に勤めていた人は「俺は〇〇商事で部長をしていたんだぞ!」とマウンティング意識が高くなってしまっているのかもしれない。そのためフラットな人付き合いができなくなってしまうと考えられる。仕事も近所付き合いもしないと老いが早くなり、池田氏は
「世田谷区は要介護認定の割合が23区でトップなんです」
と警鐘を鳴らした。このようにプライドからくる老後の心配を「世田谷病」と呼んでいるという。
「世田谷区だけではないですけど、プライドを強く持つけど老後は大変になる」
また、世田谷は高齢者夫婦の二人暮らしの割合は23区中1位だが、一人暮らしの割合は23区中最下位と紹介する池田氏。理由として、夫婦の片方が亡くなると、子どもが住んでいる街に引っ越す傾向があるためだという。これで人との関わりが増えて安心と思いきや、
「安心ではないです。配偶者が亡くなる時は80~85歳ぐらいですよね。そういう歳になってから、見ず知らずの街に引っ越すとどんどん孤立化が進んで、認知症や身体の老いも進んでしまう」
東京都福祉保健局東京都監察医務院が発表した調査結果によると、2015年の東京都23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は3127人だった。10年前の平成17年(1860人)よりも大幅に増加しており、孤独死は今後も大きな問題になっていくだろう。
池田氏は、「世田谷区だけではないですけど、プライドを強く持つけど老後は大変になる」と締めた。現役時代の輝かしい実績があればあるほど、孤独死のリスクを高めてしまう。定年退職を控えている人は、自分と仕事を切り離す準備が必要なのかもしれない。