公的年金の水準低下に加え、退職金制度のある企業も減っている。退職金制度がある企業は1992年度には92%だったが、2017年度には80.5%に減少した。大卒・院卒の管理・事務・技術職の退職金平均給付額は、1997年の3203万円をピークに減少。2017年には1000万円以上減って1997万円になっている。
こうした状況を踏まえ、かつてのように退職金と年金給付をベースにした老後生活を営むモデルは「成り立たなくなってきている」と分析。年代に応じた資産形成をするよう勧めている。
国立社会保障・人口問題研究所の試算では、現在60歳の人のうち4人に1人が95歳まで生きると予測している。長生きすることで生活費用が足りなくなる「長生きリスク」は、自分にも降りかかるものとして考えておくべきだろう。
できるだけ長く働いて生活費を稼ぐことも対処法の1つだが、老齢になれば心身の不調も出る。健康寿命は男性で約72歳、女性で75歳と言われていて、それぞれの平均寿命から考えると、男性は約9年、女性は約12年の間、日常生活に制限が生じる可能性がある。
制限が生じる期間は就労ができなかったり、介護費用などの特別支出が発生したりすることも考えられる。金融庁は、健康寿命と平均寿命の差を埋めることも重要だと指摘している。
報告書案では、現役期を「長寿化に対応し、長期・積立・分散投資など、少額からでも資産形成の行動を起こす時期」と定めた。老後まで時間があるため、保有資産や収入が少なくても「長期・積立・分散投資を習慣化して行うことにより安定的に資産を形成できる可能性は十分にある」としている。NISA、iDeCoの活用や、信頼できるアドバイザーを見つけることも重要だと述べていた。
金融機関には「顧客本位の業務運営の徹底」求める
また、金融機関に対し、「顧客本位の業務運営の徹底」も求めた。個々人の状況に応じた商品やコンサルティングサービスの提供のほか、顧客の認知・判断能力低下に備え、本人意思の定期的な確認をするよう要求している。
ネットでは政府が国民に「自助」を求めたことについて、「自助を求めるならもっと蓄えやすい状況にして」「年金の支払いで貯蓄できないのに自助とは」などの不満も噴出している。