ふるさと納税は、任意の自治体に寄付して(返礼品をもらう)代わりに、本来は住んでいる自治体に納めるはずの住民税から一定額が控除される制度だ。
川崎市の人口は153万人で税収も多いが、それでも56億円となるとかなりの額。市は本年度の当初予算で3700憶円規模の市税収入を見込んでいたが、3637憶円にとどまっている。
キャリコネニュース編集部が川崎市税制課に問い合わせたところ、
「56憶円は本市の事業に置き換えると、例えば、川崎市民のごみ処理経費の4割以上、保育園の運営費なら園児3000人分に相当する金額です」
と流出額の大きさを説明する。さらに、人口密度などの観点から税収面の不利が認められる自治体であれば、地方交付税により減収額の75%は補填されるが、同市は対象外。「ふるさと納税の減収分がそのまま本市の税収減となるので、他の自治体よりも影響は大きい」という。
税収が減ると、市民の住民サービスに影響が出てくる。明日から急に、家庭ごみの収集がストップしたり、保育園で子どもを預かってくれなくなったりしたら大変だ。そこで、同市は不足分を市の基金から借り入れ、市民生活を維持するのに必要な財源を確保している。基金とは市の貯金のこと。つまり、このまま借り入れを続けると、”底”が見えてきてしまう。
「ふるさと納税自体に制度上の問題がある」
中刷り広告は南武線のほか、市営バスや、市の広報掲示板にも掲出している。広告内には、同市の担当課の電話番号が記載されており、広告を見た市民からの電話が鳴ることもあるという。その中で、最も多い内容が
「税収の流出をただ嘆くだけでなく、受け入れるための態勢を強化すべきだ」
といった手厳しい意見。民間のふるさと納税サイトを活用して窓口を広げたり、寄付が集まるようにより魅力的な返礼品を用意したりすることを指すのだろう。
返礼品のうち人気があるのは、サッカーJ1「川崎フロンターレ」に所属する選手のサイン入りユニホームだという。このほかにも、今月から食品や雑貨などの44品目を新たに追加するなど、年末のふるさと納税ピークに向けて力を入れている。
同課の担当者は「中刷り広告は、市民に現状を知ってもらうことが目的」とした上で、
「返礼品に目が行きがちだが、本来は生まれ育った地域に寄付することで応援していこうというのが『ふるさと納税』の趣旨。今後も本市にゆかりのある体験や、魅力を伝えられる返礼品を準備してPRに努めたい」
とコメントしている。さらに、「ふるさと納税自体にもまだ制度上の問題があると考えている。問題改善に向け、国に対する要望にも注力していきたい」と語った。