国土交通省は11月下旬、公共交通機関などでのベビーカー利用に関する調査結果を発表した。調査は7月にネット上で実施し、15~89歳の男女1000人から回答を得た。
電車やバスなどでベビーカーを折り畳まないことへの賛否を聞くと、回答者の8割以上が「賛成」(40.7%)または「どちらかというと賛成」(41.9%)と答えた。年代別に”賛成派”の割合を比較すると、「10~20代」(計91.2%)が最も高く、「60代以上」(計83.2%)が続いた。
「ベビーカー使用者同士で固まっている」と不満の声も一部あるが……
一方、”反対派”(17.4%)も一定数いることが分かった。主な理由としては「混雑時は他の乗客の迷惑になる」(68.4%)、「混雑時はベビーカーの子どもの安全が確保できない」(48.3%)、「出入口付近にいることが多い」(40.8%)、「子どもが乗っていないのにベビーカーを広げたままにしている」(37.4%)などが挙げられた。このほかにも
「ベビーカー使用者同士で固まっている」(21.8%)
「子どもをほったらかしにしている」(11.5%)
などと感じている人がいるようだ。
また、「ベビーカー使用者が周囲に気遣いをしていると思うか」という質問に対しては、6割以上が「そう思う」(24.9%)または「どちらかというとそう思う」(40.5%)と回答。一方、否定の声(23.1%)も2割以上にのぼった。
年代別では、やはり「10~20代」(69.6%)、「30代」(70.6%)といった若年層で多くの理解を得られる傾向にある反面、「40代」「50代」(各61.4%)では比較的低かった。
“折り畳まない派”の9割は「周囲に気遣いしている」と自己評価
続いて、電車やバスなどでベビーカーを折り畳まない経験者に「周囲に気遣いをしていると思うか」を聞いたところ、9割以上が「そう思う」(67%)または「どちらかというとそう思う」(26.5%)と答え、自己評価と周囲の認識の間に大きな差があることが分かった。一方、わずかながら「思わない」(4.7%)とした人もいた。
さらに、「ベビーカーを安全に使用するための留意点」として提示した7項目のうち知っている留意事項を挙げてもらうと、3割近くが「知っていることはない」(29%)が回答した。
認知度が最高だった項目は「駆け込み乗車をしない」(47.2%)。次いで、「シートベルトを着用する」「接触したり、移動の妨げにならないようにするなどの操作に気をつける」(各36.9%)、「止めている間はベビーカーから目を離さず、ストッパーをかけ、手を添える」(36.8%)と続いた。他に「段差のつまづきや、ホームと車両の隙間に注意する」(33.1%)、「エスカレーターや階段では子どもを降ろす」(31.1%)、「バス車内では固定ベルトを使う」(17.4%)という項目もあったが、いずれも半数以上が知らなかったようだ。
また、電車やバスなどで「ベビーカーを利用しやすい環境を整備するために重要だと思う施策」を聞くと、最多は「ベビーカーマークの掲出場所の拡大」(55.4%)。次いで、「ベビーカー優先の車内放送」(47.2%)、「ベビーカー優先スペースなどの設置」(46%)、「各種広報媒体を通した周知活動」(41.6%)といった意見が挙がった。「ベビーカーマーク」は、安心してベビーカーを使用できる場所や設備を示す標示で、同省が普及活動を進めている。このほか
「ベビーカーの小型化の促進」(32.5%)
「多言語化による表示」(16.5%)
を求める声もあり、今後も多様化するニーズに応じていく必要性が垣間見えた。
同省は2014年、各種交通機関の関係者らが参加する協議会で「ベビーカーを折りたたむか否かということについては、賛否両論の意見がある」とした上で、
「車内への持ち込み可能なサイズを超える場合、バス車両の構造上折りたたまずに持ち込むことが困難な場合、走行環境が厳しい区間を走行するバスの場合などを除き、公共交通機関においてベビーカーを折りたたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とした」
とした報告をまとめている。