帝国データバンクは6月4日、「景気動向調査(全国)」の結果を発表した。調査は5月にネット上で実施し、全国2万3675社を対象に同月の国内景気動向を調査・集計し、景気DI(ディフュージョン・インデックス)として発表した。景気DIは、50を境に上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味している。
5月の景気DIは、前月比0.6ポイント減の25.2となり、8か月連続で減少した。政府の緊急事態宣言で、経済活動が大幅に制約されたことが影響した。生産調整、一時帰休などが実施され、生産・出荷量DIは過去最低の水準まで落ち込んだほか、企業の人手不足感は急激に減退した。
「ホテル・マンション事業の完全停止で、土地価格が低下している」
業界別にみると、「製造」(前月比1.7ポイント減)、「卸売」(同0.7ポイント減)「農・林・水産」(同3.1ポイント減)など10業界中5業界が悪化。一方で「サービス」(同0.3ポイント増)、「不動産」(同1.6ポイント増)など5業界が改善した。51業種別では「広告関連」(同0.6ポイント減)などの7業種で過去最低を記録している。
各企業の声からは
「ホテル・マンション事業が完全に停止、土地価格も低下している」(不動産代理)
「交通広告は旅客の減少による影響が大きい」(広告代理)
といった声が寄せられた一方で「在宅により家庭用空調機の修理需要が増えている」(冷暖房設備工事)という企業もあった。
緊急事態宣言の解除を前にした5月中旬頃からは、企業の景況感は徐々に上向き始めているという。中でも、好材料だったのは外出自粛による自宅内消費の高まりやテレワーク、ビデオ通話の拡大のほか、衛生用品やハンドメイド商品など。だが、全体的にみると「国内景気の急激な収縮には歯止めがかかったものの、生産活動の減退は依然続いている」とした。
企業の業績悪化に伴う雇用や所得環境の悪化が懸念材料に
今後の見通しについて、同社は「緊急事態宣言が解除されたことで、経済活動が徐々に始動していくとみられる」とした。生産調整、一時帰休などの落ち込みからの挽回生産が期待されるほか、外出自粛や休業に伴って創出された新規需要に向けた商品・サービスも好材料になり得るという。
さらに、緊急経済対策、金融緩和策の強化に加え、訪日観光消費の再開なども下支え要因になるようだ。
一方、新型コロナウイルスの第2波・第3波が”非常に大きなリスク”として挙げられている。企業の売上が激減している中、業績悪化に伴う雇用・所得環境の悪化が懸念材料になるという。また、世界経済は大幅な落ち込みが予測され、景気回復には時間がかかる、とみている。今後は、国内外に懸念材料がある中、後退傾向が一時的に下げ止まると予測している。