Drごん@整形外科さんの地域では5月末から6月にかけて活動を再開する部活、クラブチームが多く、「ツイートした時点(6月12日)で再開2週間程度なのですが、痛みを訴えてくる選手が一気に増えました」という。
「その中で足の疲労骨折を起こしている子がいました。トレーニング内容を聞くと、過剰に負荷がかかっていた理由は”罰走”でした」
罰走による疲労骨折は、学校の部活動でも起こることはあるが、「確率的に学外のクラブチームであることが多いです」という。
「クラブチームは部活より人数が多いので、故障を起こしてもチームが組めて試合が出来てしまいます。また、指導者が有名な元選手だと、正しい指導だと信頼され、罰走もやむなしと看過される場合もあります」
実際、どのような状況で疲労骨折が起きているのか。
「今月だけでもサッカーのクラブチームだと、試合に負けたらコート周囲をチーム全員で35分完走、テニスでも試合に負けたらコート10周を全力疾走とか。部活動でもハンドボール部だと、連続でシュートを決める練習で誰かが外すとカウントはゼロになり、数時間終わらないといった罰則や罰走がありました」
また、新型コロナウイルスで活動を自粛していたアイススケートのクラブでは、遅れを取り戻そうと、それまで3日に1回だったトレーニングを毎日するようになった。突然練習量を増やしたことで体に負荷がかかり、疲労骨折に繋がるケースもあるようだ。
「日本では訴訟にならず、コーチがクビになったと聞いたこともありません」
現在30代のDrごん@整形外科さんは中学時代、サッカーチームに所属していた。当時の指導者について「完全に昔ながらのスポ根コーチでした」と振り返る。水分は最低限しか摂れず、試合に負けたら車で30分もの距離のあるホームグラウンドまで走って帰り、さらに練習をしたり、コーチがいいというまでコート周辺を走ることが日常だったという。
「『あの時の経験は役立った』と思いたい気持ちも影響していると思いますが、不思議なことに、つらい経験は美化されることが多いです。一緒に乗り越えてきた選手同士では友情が芽生えましたが、途中からコーチに対する信頼はなくなっていました」
罰走により故障者も増え、勉強との両立もできずに辞める人も多かったが、元々の所属人数が多かったため罰走は続いた。罰走は、怪我でプレーできなくなる選手の将来を奪うだけではない。つらい記憶のせいで二度と競技に戻らない選手も多いという。
「楽しみながら続けられていたら大成した選手もいたはず。罰走による疲労骨折に対しては指導者失格です。アメリカだと訴訟問題になってもおかしくありませんが、日本ではそのような判例を見たことがありませんし、コーチがクビになったと聞いたこともありません」
参加しているチームや部活に罰走がある場合、どうすればいいのか。「小学生なら親が正しい知識をつけて子供を守ることも必要です。中学生以上なら自主性をもって罰走を拒否したり、チームを移ったり、自分の身を守って競技を楽しみながら続ける方法を探してほしいです。なかなか難しいことではあるのですが、議論すること、反抗することも必要だと思います」としている。