「年収300万円時代」から「年収200万円でも楽しく」に 森永卓郎の新著が伝える日本経済の終焉 | キャリコネニュース
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「年収300万円時代」から「年収200万円でも楽しく」に 森永卓郎の新著が伝える日本経済の終焉

『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』

『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』

経済アナリスト、森永卓郎氏の『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』(7月8日発売/PHP研究所)が、先日ネット上で話題となった。森永氏は17年前の2003年、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)を刊行しており、あるツイッターユーザーがこの文庫版と新刊を並べて「15年で100万円も下がっちゃった」とツイートし反響を呼んだ。

ツイッター上ではタイトルだけで「貧しくなった日本」を改めて突きつけられて落胆する人が多かった。森永氏が提案する”年収200万円でもたのしく暮らせる”生活とは、一体どんなものなのか。確かめるべく本書を手に取った。(文:篠原みつき)

日本は「発展途上国並みになる」と予測

森永氏は、コロナ禍による経済への影響が本格化する前に、投資用の株をすべて売却し大損害を免れたという。コロナショックを予期していたわけではなく、日本経済の先行きの暗さを見越しての決断だった。「仮にコロナが収束しても世界的な大恐慌に発展する可能性が高い」と予測し、その理由として、

・これまで30年間続いてきたグローバル資本主義が崩れ始めている
・新型コロナウイルスの感染拡大に対する日本政府の対策がお粗末
・大都市(東京)一極集中による弊害
・「首都直下型地震」が1年以内に起きる可能性大

といった問題をあげている。

17年前、サラリーマンの平均年収は300~400万円にまで落ち込むと予測した森永氏だが、今は当時(2003年)より深刻だと解説した。

「市場は冷え込み、規模を問わず企業の倒産、従業員のリストラが相次ぐでしょう。みなさんの給料はどんどん削られていくに違いありません。」
「おそらく、普通の正社員でも、業種・職種によっては、年収200万円という人が大半を占めるようになるのではないでしょうか。100万円台の人が出てきてもおかしくありません。」

さらに、日本は「発展途上国並みになる」と予測し、政治批判も交えつつ日本経済の終焉を裏付ける情報をこれでもかと伝えている。

所沢などの「トカイナカ」に、自給自足で住もう

しかし森永氏は、だから全て諦めろとは言っていない。それゆえ自ら考え決断し、少しずつ生活を変えていく「ライフスタイルチェンジ」の必要性を説く。「東京を捨てて、程よい田舎に住もう」と主張している。

森永氏が暮らす埼玉県所沢市を、”都会と田舎の中間である「トカイナカ」”と表現し、暮らしやすさをアピール。所沢は人口34万人と決して小さな市ではないが、東京と比べれば自然豊かで人の密集もはるかに少ない、家賃や物価が安く駅から遠ければ住宅がキャッシュで買える、都心に比べて災害リスクが低い、などのメリットがあるという。マイカーを利用すれば駅の近くに住む必要はないし、駐車場コストも圧倒的に安いそうだ。

さらに、森永氏は群馬県昭和村でミニ農業をしており、自給自足や農業の重要性を強調。「すべての国民がどんな形でもよいから、農業を始めてみる」ということも推奨している。テレワークの普及により都会にこだわる必要がなくなったいま、本当の田舎に移住し起業するビジネスパーソンもいるという。節約生活をするには見栄を捨て、「貰えるものは貰う」など、細かな生活のコツも紹介している。

年収200万円でマイカーや住宅が買える?若干疑問は残る

筆者は埼玉県民なので、所沢市は生活インフラが整っており、郊外は閑静で暮らしやすいことに異論はない。しかし、経済アナリストでもなんでもない筆者は、子どもがいれば共働きで最低400万円は必要では? 住宅やマイカーを買うにも年収200万円では難しいのでは? と、つい考えてしまう。世帯年収200万円とは言っていないので共働き前提かもしれないが、そうした記述は見られなかった。

本書でチラッと触れた年収200万円以下で不満なく生活する人は、子どものいない夫婦1組だけだ。確かに夫婦2人であれば自給自足でなんとか暮らせるかもしれないし、株を売った資産でもあれば「たのしく暮らせる」かもしれない。

日本経済の厳しさを伝える情報に多くのページが割かれており、現状や理想は分かるが、生活者としての具体的な対策には物足りなさが残った。なにより、年収「200万円でもたのしく暮らせる」などという価値観が広まれば、「もっと給料を安くしても大丈夫なんだ」と考える雇用主が出てきそうで恐い。

しかし本書は、今後の生き残りのヒントを示しただけだ。これを参考にするか否かは、結局自分次第。読むとトカイナカに引っ越したくなるというよりも、とにかく日本経済の終焉を思い知らされる本だった。

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