メディアを賑わす“若者の○○離れ”現象 その背景・原因まとめ
“若者の○○離れ”の例は、「恋愛離れ」、「車離れ」、「酒離れ」、「外出離れ」など、数え上げると切りがない。全体的な傾向として、車で出かけることもなく、酒も飲まず、恋愛もせず、休日も家に閉じこもっているような若者が増えているということになる。
こうしたライフスタイルの変化の背景について、「お金がないから」という説明が広く支持を得ている。車や飲酒など、生活に不必要な「嗜好品」と見なされるものにお金を掛ける余裕がないのでは、という見方だ。
実際、全労働者に占める非正規雇用の割合は年々増加しており、若年層の年収は20年前と比べると約30万円低下している。こうした「カネの若者離れ」が、若年層の間で出費の抑制を招き、結果として様々な「○○離れ」に繋がっている可能性は高い。【→詳しく見る】
若者がお金をかけるのはモノよりコト SNS映えする体験型の消費が人気
嗜好品にかけるお金がないという経済的な理由の他に、しばしば指摘されるのが、消費に対する志向性の変化だ。バブル世代が「物にステータスを求める」と言われるのに対し、若者世代は、ライブやテーマパークなど、SNSにアップして楽しめる「体験型の消費」を好む傾向があるという。
最近では、高級リムジンを5人で貸切る女子会や、ドレスをレンタルしてプロに撮影してもらう「撮影女子会」といったサービスも存在し、SNSでの共有を前提とした消費スタイルがますます広がっていると言える。
このように、消費の対象がモノからコトに変化した結果、色々な「モノ離れ」現象が起きていると言えそうだ。【→詳しく見る】
SNSの普及で進む”メール離れ” 技術革新に伴うライフスタイル変化
SNSの誕生に代表されるような技術革新が、○○離れと総称される若者のライフスタイルの変化に大きな影響を及ぼしているのは明らかだ。
今やSNSは若い世代の主要なコミュニケーションツールとなった。その結果、若者の”メール離れ”が進行していると言われる。総務省の調査によると、10代、20代の平日のメール利用時間はそれぞれ17分と36.4分だった。一方で、SNSの平均利用時間は、10代は57.8分、20代は46.1分と、メールとの利用時間の差は大きい。しかし、30代以上ではSNSとメールの関係が逆転し、平日はもちろん、休日においても、メール利用率がSNS利用率を上回る。
一般に「若者」とされる世代の中でも、このように10代・20代・30代で比較すると、若年層のコミュニケーション手段がメールからソーシャルメディアに移行している傾向がはっきりと現れてくる。【→詳しく見る】
タダが当たり前の時代になり、消費は自己表現の手段となった
技術革新の恩恵は、より簡便な通信手段の普及に留まらず、情報や娯楽コンテンツのあり方を根底から変えた。
博報堂生活総合研究所は、現在の子どもたちを「物心ついた頃から、費用や手間、労力をかけずとも、情報もコンテンツも自由に利用できることが当然の世代」として、”タダ・ネイティブ”と名付けた。
この世代は、上述のように「モノ(商品)」より「コト(経験)」に価値を感じる傾向が強いほか、好きなものを支えるためのお金も惜しまない。彼らにとって消費は”好き”の表現手段であり、好きなものに主体的に関わるためにお金を使いたいと考えるようだ。こうした新しい消費志向は、「応援ポイント」という形で課金させる漫画アプリ等に如実に表れている。【→詳しく見る】
若者の○○離れは「同調圧力からの解放」を意味する?
若者の○○離れと呼ばれる変化の背景には、様々な要因が存在している。結局のところお金が無いのが根本原因だという説明が主流となっているようだが、こうしたライフスタイルの変化を「同調圧力からの解放」として前向きにとらえる人もいる。
若者が離れていったものが車であれ、お酒であれ、結婚であれ、元々不要なものを同調圧力によって強要されていただけで、そうした社会的な圧力に屈しない姿勢が広まったことが、結果的に”若者の○○離れ”現象となって現れている、という見方だ。
ただし、これに対しては、結局のところ今の若い世代はお金が無いので贅沢できないだけ、という反対意見も相次いでいる。【→詳しく見る】
“若者の○○離れ”を嘆いても現状は変わらない 企業に求められる「柔軟性」
非正規雇用の増加や全体的な賃金減といった経済的要因の他、技術革新に端を発するライフスタイルの変化が、若者の消費意欲の対象を変化させ、更には消費の目的も変化しつつある。
若者が離れていく現状を供給側がいくら嘆いても、若者は戻ってこない。現代の若者たちこそが将来の日本のスタンダードとなるのだから、供給側には、若者たちの消費志向に合わせて自らも変化し、若者の消費意欲をそそるような新たな製品やサービスを提案していく柔軟さが求められているのであろう。