メルカリに読書感想文の出品相次ぐ 「受験生や学力の低い生徒が購入か」と識者は指摘
新学期を前に、終わらない夏休みの宿題に、頭を悩ませている子どもも多いのかもしれない。フリマアプリ「メルカリ」に、読書感想文がいくつも出品されている。すでに取引が成立しているものもある。
「出品者が自由に作成した文書」のため、規約違反にはならないとメルカリ担当者
8月24日にメルカリで確認したところ、『エミリーへの手紙』(キャムロン・ライト=著)の読書感想文が500円で出品され、すでに購入されていた。400字詰め原稿用紙5枚分で、中高生向けだという。
この出品者は、他にも『羅生門』(芥川龍之介=著)や『小公女』(フランシス・ホジソン・バーネット=著)の読書感想文を500~800円程度で出品している。これらはいずれもワープロで作成されたものであり、購入者が自筆で書き直すことを想定しているようだ。
中には始めから手書きの物もあった。原稿用紙2枚分の中学生向けの内容で1000円だという。購入者はそのまま学校に提出するのだろうか。
『包帯クラブ』(天童荒太=著)の読書感想文は、原稿用紙5枚分で666円だ。出品者は、「毎日のんびり過ごしてる主婦」だという。
出品されている感想文のコメント欄には、購入を検討しているユーザーから「オリジナルの作品でしょうか?」「優秀作品であると多くの人の目に触れることになるのですが、その点は考慮して作っていますでしょうか」といった質問が寄せられていた。それに対して、出品者は、
「この作文は私が書いたものであり、ネットの引用は一切ございません」
「コンクール等で受賞するほどの作品ではありません」
と回答。「他とかぶりますか?」という質問には、「お住まいの都道府県はどちらになりますでしょうか?数名ほどに同じ作文を出品しています」と説明しており、購入した読書感想文を提出したことがバレないよう、売り手も買い手も細心の注意を払っていることがわかる。
メルカリの担当者によると、「読書感想文を含め、出品者が作成した文書は自由に出品できるようになっている。ただし読書感想文に氏名などの個人情報が記載されている場合には、商品を削除している」とのことだった。
「買い与える親にも責任がある。子どもときちんと向き合っていない」
教育評論家で石川教育研究所代表の石川幸夫さんは、こうした売買の背景に「受験生や学力の低い生徒」の存在があると見ている。
「読書感想文や自由研究の完成品を購入しているのは、中学受験生や高校受験生ではないでしょうか。忙しくて、学校の宿題をする暇がないのでしょう。一方、やる気や能力がなく、親に購入をせがむ生徒もいると思います」
小学生~中学生であれば、生徒本人ではなく、親が購入の手続きをしている可能性が高い。
「買い与える親にも責任があると思います。子どもの宿題を手伝うのが面倒くさかったり、そうする余裕がなかったりするのでしょう。子どもときちんと向き合っていないのです」
学校の教師もこうした事態を問題視しているという。
「以前から宿題を代行業者に任せる生徒はいました。本人がやっていないと、教師にはわかってしまいます。先生たちは、長期休暇で生徒の学力が低下しないように宿題を出しているのですが、こうしたことが起こると『夏休みの宿題の意味』を考え直さざるをえなくなってしまいます」
代行業者を利用したり、読書感想文を購入したりする生徒がいる現状には「本腰を入れて取り組み始めなければならない」と語った。