就活がうまくいかず心が折れてしまう前に、知っておきたいこと
景気後退の懸念から企業が新卒採用数を減らす、という報道がなされています。リーマンショック後も採用数が回復するまでに数年かかっているので、同じぐらいの期間は就活が厳しくなるかもしれません。
これまで数年続いていた「売り手市場」時代でも、希望の会社に内定がもらえないと悩む学生は一定数いました。これから「買い手市場」にシフトしていけば、就活がうまくいかないと悩む学生がさらに増えるのではないかと思います。
しかし、ここ数十年で求人倍率が1倍を切ったのは、ただの一度きりです。つまり、きちんと探せばどこかに必ず「席」はあるのです。(人材研究所代表・曽和利光)
確率が下がるなら多く受けるしかない
問題は、必ずあるはずの「席」にすべての学生がたどり着けるのかどうかですが、そこには少し懸念があります。それは、就職が厳しくなるという不安から、学生が応募社数を増やすことで、1社あたりの応募者数が増えることです。
21卒採用ですら、私たちが支援をしている会社のほとんどが「会社説明会や選考への参加者数が増えた」と言っています。前年の2倍にもなったところもありました。
応募者が増えて採用数が減れば、競争倍率は高くなり合格率は下がります。人によっては「受けても受けても不合格」という状況が生じ、心が折れてしまうかもしれません。
この対処法には、あまり選択肢はありません。シンプルですが、合格率が下がるのであれば、いろいろ受けてみる以外に方法はありません。
リクルートなどの調査によれば、コロナ前に学生が就活面接を受けた企業数は10社前後ですが、これよりも多くの企業数を受けなければ、なかなか「席」を確保することができない人も出てくるでしょう。
リーマンショック後の数年は平均30社程度だったことを考えると、同じぐらいは受けなければならないかもしれません。「そんなに受けても、落ちまくる可能性があるのか……」と暗い気持ちになりますが、それが現実でもあります。
人気企業ばかり受けてはいけない
ただ、本当に心が折れてしまっては元も子もありません。ポジティブに就活を続けていくにはどうすればよいでしょうか。
方法のひとつは「人気企業ばかり受けない」ことです。「ここだけは」と思うところは受ければよいのですが、「とりあえず」くらいで人気企業を受けるのはお勧めしません。
人気企業の合格率は、おそらくこれから数年は1%にも満たないところが多くなるでしょう。「とりあえず」の人が受かる余地はほぼありません。「好きでもない人から振られる」みたいな経験をたくさんしてメンタルを崩すなんて、バカらしいではありませんか。
また、最近ではスカウトメディアが隆盛です。学生が自分の情報を登録しておけば、企業側から「会いませんか」とアプローチしてくれます。
同じ社数を受けるのであれば、スカウトしてくれた会社に会う方がよいでしょう。自分を何らかのポイントで事前に評価してくれているわけですから、書類で落ちることもありませんし、合格率も高まります。
向こうから呼んでくれたのですから、志望動機すら必要ありません。これなら気分のよい就活になるのではないでしょうか。スカウトメディアを使う企業は、優良企業なのに知名度が低く、採用に力を入れている「穴場企業」が多いのもメリットです。
優良中小企業には積極的にアプローチする
日本企業の99%以上は中小企業で、約7割の人がそこで働いています。ところが、多くの学生が1%に満たない大企業に殺到しています。このアンバランスを利用するのも手です。
リクルートの直近の調査でも、従業員5000人以上の大企業の求人倍率は0.6倍と低いのに対し、300名未満の会社では3.4倍とまだまだ「売り手市場」です。
ところが、少数しか採らない中小企業は就職ナビを使っていないところも多く、発見がしにくいため「自分からググる」ことが大事です。「優良中小企業 ランキング」などと検索してみれば、たくさん「知らない優良企業」が出てきます。
そういう企業のホームページにアクセスして、積極的に「直接応募」してみてはどうでしょうか。新卒を募集していない企業であっても、直接応募なら費用もかからないので「一度会ってみるか」となる可能性も高いです。
もし断られたとしても何の実害もないわけですから、こういう競争のあまりないところこそ積極アプローチするのは大変お勧めです。
人事側から見ると、ナビや合説など「お膳立てされた」場にしか出てこない学生がほとんどで、「直接応募」する学生は極めて珍しく、それだけでも高評価されるかもしれません。ぜひそんなことも試してみて、少しでも気分よく就活をしませんか。
【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『コミュ障のための面接戦略 』 (星海社新書)、『組織論と行動科学から見た人と組織のマネジメントバイアス』(共著、ソシム)など。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/