上場企業の財務諸表から待遇を探る「これだけもらえる優良企業」シリーズ。今回は、東証一部上場の東京ドームを取り上げます。
東京ドームの平均年収は590万円
最新データ(2020年1月期)によると、東京ドーム社員の平均年間給与は590.5万円。2期前と比べると11万円ほど減っています。
- 2016年1月期:598.5万円
- 2017年1月期:590.9万円
- 2018年1月期:601.9万円
- 2019年1月期:597.8万円
- 2020年1月期:590.5万円
この額には、賞与や基準外賃金(手当など)も含まれています。
企業口コミサイト「キャリコネ」に投稿された給与明細によると、企画営業担当の20代男性の年収は250万円。報酬については「満足していない」としつつ「給料よりやりがい、という方には向いている」と書き残しています。
東京ドームの業績はここ数期は好調で、2020年1月期の売上高は前期比5.2%増の916億円、営業利益は同2.2%増の117億円の増収増益でした。読売ジャイアンツがセ・リーグ優勝を果たし、東京ドームでクライマックスシリーズと日本シリーズが開催されたことが要因のひとつになったようです。
ところが2021年1月期は、新型コロナ禍の影響で大規模イベントを開くことができず、業績が急速に悪化。財務健全性に不安があったこともあり、11月27日には三井不動産が東京ドーム株に株式公開買い付け(TOB)を行うと発表しています。
東京ドーム社員の平均年齢は39.6歳
次に、従業員数と平均年齢、平均勤続年数(ともに単体)を見てみましょう。
東京ドーム社員の平均年齢は39.6歳。ざっくり言うと、40歳で600万円前後をもらう人が多いということでしょうか。
- 2016年1月期:813人(40.7歳・14.9年)
- 2017年1月期:820人(40.5歳・14.5年)
- 2018年1月期:840人(40.4歳・14.3年)
- 2019年1月期:864人(40.1歳・14.1年)
- 2020年1月期:888人(39.6歳・13.7年)
このデータは東京ドーム本体(単体)のものですが、グループ全体(連結)の従業員数は2020年1月期で2,045人。単体が占める割合は43.4%です。
東京ドームの報告セグメントは6つ。中核事業の東京ドームシティ事業は、東京・水道橋地区で東京ドーム、東京ドームホテル、東京ドームシティ アトラクションズ、スパ ラクーア、飲食店・売店などを営んでいます。
このほか、化粧品・雑貨小売店「ショップイン」「クレームエルージュ」を運営する流通事業、「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」を運営する熱海事業、「松戸競輪場」を運営する競輪事業、水道橋地区以外の不動産管理を行う不動産事業、その他事業があります。
2020年1月期の売上高構成比は、東京ドーム事業が76.0%、セグメント利益でも同事業が大半を占めています。流通事業の利益は小さく、熱海事業とその他事業は赤字です。
三井不動産の完全子会社化で上場廃止に
東京ドームは、以前から経営に問題があると見られていました。短期の支払能力を測る流動比率は、2020年1月期時点で43.4%。「1年以内に返すべき借金よりも、1年以内に現金化できる資金の方が少ない」状態として財務健全性が不安視されています。
そこにコロナ禍が直撃。2021年1月期の上期決算は、売上高が前年同期比62.5%減まで落ち込み、54億円の営業赤字に陥っています。通期でも180億円の最終赤字となる見込みです。
コロナ前から香港のファンドがノンコア資産の「熱海ベイリゾート後楽園」と「松戸競輪場」の売却を含めた事業見直しを迫っていましたが、最終的には三井不動産が完全子会社化に向けてTOBを行うことになりました。
なお、完全子会社化後、東京ドームは上場廃止となります。東京ドームの新卒採用サイトによると、2022年3月卒の新卒採用は実施しないことになったようです。
—–