教材開発にかける情熱──究極の願いは、子どもたちが幸せになること | キャリコネニュース
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教材開発にかける情熱──究極の願いは、子どもたちが幸せになること

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学生時代は教師を志望していたという奥野 亮太。学校以外で教育に携わることに可能性を感じ、民間企業でキャリアを積む道を選びました。2022年10月現在は、子どもたちが楽しみながら学べる教育コンテンツ開発に取り組む奥野。仕事と向き合う上で大切にしているこだわり、目的について語ります。【talentbookで読む】

教育は学校だけで行われるものじゃない──学校以外での教育に可能性を感じた

学生時代の奥野の夢は教師になること。そう思うようになったきっかけは、中学時代に出会った恩師の存在でした。

奥野「中学時代に阪神淡路大震災を経験しました。その翌年から生徒会に所属して活動していたのですが、震災が起こった年にさまざまな活動をしていた先輩たちと、比較されることが多かったんです。

そんな中、生徒会の顧問だった先生が『お前たちがよくやっているのは俺が一番分かっている。気にするな』といつも声をかけてくれて。自分も生徒に寄り添い、助けになるような相手の心に届く言葉を発せられる教師になりたいと思うようになりました」

教師を目指して教育学部に進学した奥野。大学4年生のとき、所属していたゼミの先生から頼まれ、子どもたちのためのサマースクールに参加したことがきっかけで、転機が訪れます。

奥野 「小学生と一緒に町を歩いて、互いに学び合いながら町の新たな魅力を発見しようというプログラムでした。子どもたちにとって、学びの場は学校の中に限定されないことを思いがけず知ることになり、学校以外の教育への興味が芽生えたんです」

その後、大学院に進学した奥野は、“地域学習の変遷”をテーマに研究を重ね、「学校の外での学びのために、何ができるだろう」と考えるようになります。民間企業が手がける教育について調べる中で出会ったのが、小学館集英社プロダクション(以下、ShoPro)でした。

奥野 「社会教育事業部(現パブリックサービス事業部)が、公共事業を受託して、生涯学習活動などを推進し、学校以外での学びの場づくりにコミットしていると知って強く共感したのを覚えています。『教育は学校だけで行うものではないんだ』と視野が広がり、ここで挑戦してみようと思いました」

子どもたちに何を届けたいのか──真剣に議論を交わす仲間と手掛ける教材開発

社会教育事業部(現パブリックサービス事業部)時代の奥野

入社後、最初の配属先となったキッズ教育事業部では、小学館の幼児教室ドラキッズの運営を千葉・埼玉エリアで担当しました。希望していた社会教育事業部(現パブリックサービス事業部)へ異動となった後は、自治体からの公募を受けて提案書を作成し、プレゼンを行う公共事業の入札業務や、受託後の施設のマネジメントを経験。千代田区の公共施設である九段生涯学習館や日比谷図書文化館の運営担当として、地域のための場づくりに取り組みました。

入社前から憧れていた仕事に就き、生き生きと働いていた奥野でしたが、2013年に通信教育事業部への異動が決まります。

奥野 「前の仕事を続けたい気持ちはありましたが、新しい挑戦をすることは好きなほうです。『これも何かの縁』と、前向きな気持ちでした」

異動後は、小学生向けに展開していた通信教育サービスに、新たに幼児向けの教材を展開するための仕事にあたりました。教材だけでなく、“まめドラ”というオリジナルキャラクターの開発にも携わっています。

2021年には 、教育に関わるものを全社横断的に提供できる部署として、事業開発本部教育コンテンツ開発室が発足。奥野は現在、通信教育の教材を作ってきたメンバーと共に同室に所属しています。

奥野 「教育コンテンツ開発室の業務内容は多岐にわたります。小学館の通信教育『名探偵コナンゼミ』のワークブックやナゾトキの制作や小学館、集英社から出版されている書籍の制作にも携わっています。

また、他部署との連携も活発です。名探偵コナン事業部が手がけるイベントのために教育要素を加えた館内周遊ラリーを企画したり、名探偵コナンの商品に教育要素を加えたものを共同開発したりもしています。さらに、教育アドバイザーとして他社のコンサルティングを行うなど、“教育”をキーワードにさまざまな業務に取り組んでいるところです」

多様な教育コンテンツの開発に精力的に携われる理由を、「楽しいから」だと話す奥野。自分と同じ熱量をもったチームメンバーと共に、「自分たちは子どもたちに何を届けたいのか」と熱心に議論を交わしながら、サービス開発に取り組んでいるといいます。

奥野 「『子どもたちに幸せになってほしい』というのが究極の願いです。これもメンバーの中から出てきた想いですが、すごく共感し、自分たちが大切にしている一つです。幸せとは、誰かから押し付けられるものではなく、自分で選び取ってこそ感じられるもの。そのきっかけとなるようなものをたくさん提供できたらと考えています。

ShoProは、真面目なものからエンタメ要素の強いコンテンツまで、扱うものはさまざま。対象やニーズをイメージしながら、たくさんの材料をどう料理して届けていこうかと考えるのが私たちの役目です。子どもたちの幸せにつながるものを生み出していこう、という想いで日々取り組んでいます」

社会を生き抜く上で必要な力を、楽しみながら身につけてもらうために

奥野が取り組む幅広い業務の一つに“名探偵コナンゼミ”の開発がある。

奥野 「“名探偵コナンゼミ”は、国語と算数を中心としたワークブックとナゾトキ学習の2本立てで構成されています。ワークブックを作る上で意識しているのは、教科書で学ぶことに加え、これからの社会を生き抜いていくために必要な、自己表現力や思考力を育てるための要素をコンテンツに盛り込むことです。

たとえば、国語ではとりわけ作文に力を入れています。ただ原稿用紙を埋めてもらうのではなく、状況を判断し、キャラクターの気持ちを想像しながら吹き出しに言葉を当てはめるなど、楽しく文章を書けるような工夫をしているんです。

算数では、高学年になり苦手意識を持ちやすい図形問題への抵抗感をなくしてもらおうと、1年生はパズル遊び、2年生は点をつないで図形を作るという具合に、成長に合わせて楽しみながら取り組める問題をふんだんに用意しています」

また、同ゼミでは思考力を育むことを目的として、“思考の達人ツール”をオリジナル開発しているという奥野。

奥野 「大人が仕事でも使っているベン図やXYチャートなど、自分の頭の中を整理するツールを導入していますが、小学生のうちから頭の中を可視化して、考えをさらに深めてもらおうという狙いがあります。テーマは『ゾウとキリンを比べてみよう』といったものから、学校生活に関連するものまで、とっつきやすいものにしている点も特徴です」

一方、ナゾトキ学習でも、単なる遊びではなく、国語・算数・理科・社会の学習要素を加え、空間認知力や読解力、直感などが育まれるような設計にしているといいます。

奥野 「たとえば、計算問題を使うナゾトキ、漢字や文法を使って解くナゾトキなどを盛り込んでいます。名探偵コナンのアニメを見ながらナゾトキに取り組むという新しいスタイルで提供しています。楽しく学んでもらうのが理想ですが、何に楽しさを感じるかは人それぞれ。あちこちに娯楽的要素を散りばめつつ、ご褒美的なものも用意するなど、日々考えを巡らせています」

教育コンテンツを作る以上、間違ったものは届けられないため、常にチーム一丸となって校正やファクトチェックに励んでいるという奥野。同時に、目の前のことだけではなく、常に未来を見据えていると話します。

奥野 「先が見通しづらいこれからの時代、どんな教育コンテンツが必要になるかを考えながら作っていくことが、難しいところであり、楽しいところでもあります。繰り返しになりますが、最終的に目指すのは、“子どもたちが幸せになるためのきっかけを提供する”こと。“名探偵コナンゼミ”を学習した子どもたちに、自分なりの幸せをつかむきっかけをプレゼントできたらと思っています」

試行錯誤を繰り返し、ShoProにしか作れないコンテンツを

書籍の企画・制作、小学館思考力テスト、思考の達人ツールなど、主に幼児・小学生を対象とした独自性のある教育コンテンツを開発しています。

教育に携わる者として、常に“選択肢を提供する立場”でありたいと奥野はいいます。

奥野 「生きていく上で必要なことを提案するのが教育だと考えますが、それが押し付けであってはいけないと思っているんです。あくまで主体的に選んでもらうことが大事なのかなと。子どもたちに幸せになってもらうために、『これはとてもいいものだよ』と胸を張って勧められるものを、できるだけ多く提案していきたいと思っています。

そのためには、自分自身も学び続けることが不可欠です。いつもアンテナを張り巡らせ、チームメンバーとの情報交換をしきりに行っていますし、キャラクターと教育のコラボを検討するため、最近は皆で漫画を読むことも増えてきました」

そんな奥野、そして教育コンテンツ開発室がいま目標とするのは、唯一無二のコンテンツづくりです。

奥野 「他社の追随を許さない、ShoProオリジナルの教育コンテンツを作ることを目指しています。それはきっと、強い信念をもち続け、切磋琢磨した先にようやくたどり着くことができるであろう最終的なゴール。ひとつ作って改善し、また次のものを作ってと、地道な作業を繰り返しながら、より良いコンテンツを通して世の中に貢献したいと思っています」

一方、これまでのキャリアを振り返り、「すべての経験がいまの自分に通じている」と話す奥野。次のように続けます。

奥野 「ずっと同じ事業部にいたとしたら、ひとつのことにしか取り組めていなかったはず。さまざまなアプローチから教育と向き合ってこれたことは、とても有益だったと思っています。いま、パブリックサービス事業部と連携して進めている案件があるんです。間接的であれ、公共事業に関われていることにも楽しさを感じています」

後進の育成にも意欲的だという奥野。

奥野 「教育の醍醐味は、人に寄り添い成長に伴走していくことだと思っています。それは、子どもたちの顔を想像して教育コンテンツを開発し提案していくことも、メンバーの成長を考える人材育成にも共通していると感じているので、社内のメンバーに自分の経験を還元していくようなキャリアの方向性も考え始めているところです」

教員ではなく、民間企業の一員として教育に携わる道を選んだ奥野。子どもたちの幸せを願う気持ちを原動力に、これからも全力疾走を続けます。

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