エグゼクティブに朗報! 職場での「ハードな頭脳労働」は脳の老化を遅らせるらしい
職場で毎日頭を悩ませているあなたに朗報です。疲労困憊の源になっているハードな仕事は、実は老後の認知機能の低下からあなたを守るかもしれないのです。
7月5日付Business Insiderのシャナ・レイボウィツ氏の紹介によると、独ライプチヒ大学のフランシスカ・セン博士とその研究グループは、現役時代の仕事の種類によって、リタイア後の老年期の記憶や思考が左右されるという研究結果を発表したそうです。(文:夢野響子)
「職種」が与える影響は教育より大きい
研究グループは75歳以上の1054人を対象に8年間、1年半ごとに対象者の記憶と認知能力テストを行いました。対象者の職歴についても調べ、彼らが携わってきた仕事を「エグゼクティブ業務(executive task)」「口頭業務(verbal task)」「流動業務(fluid task)」という3つのカテゴリーに分類しました。
「エグゼクティブ業務」とは、業務の遂行計画を立てたり戦略開発をしたり、業務上で起こる様々な対立を解決するようなタスクです。「口頭業務」は情報を評価したり、解釈したりするタスクです。
「流動業務」にはデータ分析や、心理学で言われる選択的注意(あらゆる情報が得られる環境内で、自分自身が重要だと認識する情報のみを選択して、それに注意を向ける認知機能)が求められる仕事が含まれます。
研究の結果、これら3つの業務で高いレベルの仕事に携わってきた人たちは、記憶と認知能力テストで最高点をマークし、老年期の認知機能の低下ペースが最も遅いことがわかりました。特にエグゼクティブ業務を含む仕事は、認知機能の低下を防ぐのに最も効果があるようでした。
セン博士は「人々が現役時代を通じて携わる仕事の種類が、その後の脳の健康に与える影響は、教育が与える影響より大きいという点が、この研究では重要」と述べています。
認知機能の高い人が頭脳労働をしてるのかも?
これまでの研究では、高い教育が老後の痴呆のレベルを下げるといわれてきました。実際、ハードな頭脳労働は高等教育と同じように、脳を訓練して認知機能の低下に対処させ、それが記憶の停滞や思考の低下を遅らせるのかもしれません。
もちろんこの研究は、「作業環境が労働者の認知機能を変化させる」ことを必ずしも証明してはいません。もともと高い認知能力を持つ人が、より高度な頭脳労働を選んでいるのかもしれないからです。
また、この研究は、毎日「疲れ果てた」と感じることが将来の健康に通じる、と言っているわけでもありません。日々難しい業務に対処しなければならない状態が、労働者に脳を絶えず働かせ、知的刺激を感じさせるのだということです。
「職場における難題の数々は、労働者の精神の健康を長期的に保つとしたら、そう悪いことではないのかもしれませんね」
セン博士はこう結んでいます。なお、同じ頭脳労働でも、研究者や教師のようなタイプの頭の使い方が、脳にどのような影響を与えるのかについては、残念ながらこの研究で扱っていなかったようです。
(参照)Your incredibly hard job could have a surprising benefit for your health (Business Insider)
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