非正規4割社会にミッツ・マングローブ直言 「活躍なんかしなくったっていい。ちゃんと生活できればいい」
10月24日のNHKスペシャル「#雇用激変」で放送されたのは、深刻化する雇用の問題。現在、非正規社員は働く人全体の37.4%を占め、非常に高い割合となっている。
番組冒頭から驚かされたのが、ノーベル賞を獲った山中伸弥教授が所長を務める「京都大学iPS細胞研究所」の職員(全体で約350名)のうち、なんと9割以上が任期1~2年の非正規雇用ということだ。
「研究以上にそちら(雇用の問題)の方に頭を悩ませている毎日」だと語る山中氏。世界も注目する日本屈指の研究所でも雇用状況は相当不安定なようだ。このまま進むと、日本社会はいったいどうなってしまうのだろう。(文:みゆくらけん)
正社員と非正規、どちらがいいと言い切れない世情
働く現場では今、非正規と正社員の二極化が起きている。「不安定・低賃金・能力開発のチャンスに乏しい」非正規に比べ、正社員は「勝ち組」と見られがちだ。
しかし実際には正社員も残業や出張が多く、非正規が増えたしわ寄せで責任がより重くなり、過酷な労働下に置かれている人も多い。「それでも正社員になりたい」と希望する人も多いが、どちらがいいとは白黒付けられない世情である。
そんな中、第3の雇用形態として広まりつつあるのが「限定正社員」という新しい働き方だ。正社員と非正規の中間に位置する働き方で、地域や時間、業務が限定された働き方だ。待遇や福利厚生も正社員と同じように受けられることが多く、子育てや介護をしながら、生活状況に合わせて働くことができると注目されているという。
しかしスタジオでは、限定正社員に誘われたことがあるという、一般主婦でパート勤務のHさんがその問題点をこう話した。
「給与面を聞いてみたら、時給換算すると850円。非正規の頃より100円下がっていた。それじゃ働けない、と」
つまり「安定の代わりに給料が下がる」という場合もあるということだ。
「みんなが活躍できる社会」は必要なのか
雇用・労働問題に詳しい弁護士の佐々木亮氏は「一番怖いのは(地域など)限定したものが崩れたとき。その時に首を切られる」と危惧。厚生労働審議官の岡崎淳一氏は「企業が選択肢を設けるのはいいことだが、正社員の処遇を落とすためというのはまずい」と発言した。
結局は支払う側も支払われる側も「お金」である。働く人の不安の根本を突きつめると、雇用形態よりも低賃金にありそうだ。正社員でも賃金低下が当たり前な社会を背景に、これまで中間層であった年収300~600万円の人が減少し、年収200~300万円が増えているという(30代)。子育て世代におけるこの数字は、安心して子どもを育てていけるという自信には到底つながらない。
このような現状での打開策を問われたスタジオメンバーの一般人・人材サービス会社で正社員として働くHさんは「ひとつの企業でずっと、みんながみんな勤めあげられる環境ではないので、みんながどこかで活躍できる社会を作っていく必要がある」とコメント。しかしこの発言を一刀両断したのがミッツ・マングローブだ。
「活躍なんかしなくったっていい。ちゃんと生活ができればいい。活躍なんて二の次だと思う」
「活躍する場がないから心の病気が増えている」という指摘も
ミッツのこの発言は、今の社会は自立して生きていくことがまず大変なのだから、みんながみんな、活躍する必要はないという意味だ。確かに仕事における「やりがい」とか「輝く」などというワードは、時に重圧になってくる場合がある。
ミッツのこの発言に対し、視聴していたネットユーザーから共感の声が上がっていた。
「ミッツさん。いい事を言ってくれました!」
「『活躍なんて二の次』という言葉に共感」
「そうだよ、1億総活躍とかナンセンス。それよりみんなが普通に生活できることが大切」
「ミッツ・マングローブの発言だけが番組の救いだった気がする」
一方、「『活躍しなくていい、生活ができればいい』という言葉、私は違うと思う。活躍する場がないから、心の病気も増えている」という意見もあった。あぁ、働くって、生きてくって、タイヘン。。。
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