「職業性ジストニア」とはどんな病? 国内患者2万人、仕事に不可欠の身体機能が使えなくなる
その人の仕事にとって、なくてはならない体の機能が突然きかなくなる病気「職業性ジストニア」をご存じだろうか。10月27日放送の「NEWS ZERO」(日テレ)では、それがどういった病なのかを紹介していた。
有馬圭亮さん(26歳)は、この病気を患いながら演奏活動を行う「左手のピアニスト」だ。日常生活に支障はなく、右手で楽譜をめくったり字を書いたりは普通にできる。音大に通う21歳のとき、ピアノを弾こうとすると右手だけに震えが起き、ミスタッチが増え始めた。やがて演奏ができなくなり「職業性ジストニア」と診断された。
美容師は「手」、営業職は「口」が利かなくなってしまう
ジストニアとは脳の運動をつかさどる分野の障害で、体の一部分だけが麻痺やしびれなど思うように動かなくなる病気。その原因は不明で、根本的な治療法は確立されていない。患者数は国内でおよそ2万人だという。
職業性ジストニアの特徴は、仕事柄よく使う部位に発症するのが特徴だ。美容師やマンガ家は「手」、教師は「腕」、営業職は「口」などが利かなくなってしまう。
さらに患者にとってもうひとつの問題が、ときには医療関係者からも誤解を受けることだという。国立精神・神経医療研究センターの坂本崇医長はこう説明する。
「往々にして、気の病とか精神的なヒステリーと間違えられることがあるが、決してそういうものではない。れっきとした、身体の病です」
職業性ジストニアに悩まされた有名ミュージシャンもいる。気志團のドラマー白鳥雪之丞さんも左手に発症し、2014年3月で「無期休学」のきっかけとなった。気志團のウェブサイトによると、白鳥さんの場合には発症前に筋肉の不全断裂があったようだ。米米CLUBの金子隆博さんは10年前に発症し、サックスを吹くことができなくなった。
「(サックスを)口にくわえようとすると、首が蛇行して逃げていく状態でして……」
「ショックというより、あっけにとられてしまって。どうやって病気と闘っていくかを考えるしかなかった」
大切にしている力を奪われる病に理解を
このように、自分の意志とは関係なく体がその動作を不可能にするのだ。金子さんは現在、キーボード奏者に転向し、ドラマ音楽の作曲を手掛けるなどしている。
前述の有馬さんも喪失感のなか、同じ病気を患う左手のピアニスト智内威雄さんの存在を知り、光が見えたという。左手だけのピアニストとして活躍するかたわら、くも膜下出血で右半身マヒになった人など、片手でピアノを演奏する人のピアノ教室も運営している。
人によって病状は違うと思うが、命に別状なく日常生活に支障がないことで誤解されやすい状況は悲しい。その人が生きるうえで最も大切にしているものが奪われる病なのだから、もっと広く認知されるべきだと感じた。(ライター:okei)
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