「今のお年寄りに殺されますよ?」 ホリエモンの「ベーシックインカム導入案」に辛坊治郎が懸念
7年ぶりにホリエモンが出演した、4月10日の「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ)。この日のテーマは「日本を元気にする秘策」で、ホリエモンが提案したのは「ベーシックインカム(以下BI)の導入」だ。
BIとは、政府が国民に一定額の現金を支給する制度のことで、就労や資産の有無にかかわらず、全ての個人に対して生活に最低限必要なお金を無条件で給付する制度である。(文:みゆくらけん)
「みんな労働信仰に支配されてイヤイヤ働いている」
これまでの常識からすると、「働かなくてもお金がもらえる」とは夢のような話だが、実際にスイスではこの6月にも国民投票を実施、導入に向けた現実的な動きが進められている。このBIを「日本でも導入するべき」と訴えるホリエモンは、「BIがあれば雇用もやりやすくなる」と考え、こう主張する。
「多くの企業で不況時に無理矢理仕事を作り、雇用を維持して赤字になっている。給料を払うために社会全体で無駄な仕事を作っているだけ。みんな労働信仰に支配されてイヤイヤ働いている。だったら政府からお金をもらって好きなことをすればいい。絶対やらなきゃいけないような仕事の給料は上がるし、もし仕事がなくなったってBIがあるから安心。子どもを作れば0歳児からBIがもらえるようにすれば、少子化対策になる」
たとえば国民一人に月8万円を給付するとして、ざっと計算して月10兆円。年間で120兆円が必要となるが、そのお金はどうやって捻出するのだろうか。
ホリエモンはこう考える。まず、消費税率を20%に上げる。日本のGDPの内需部分が300兆円として、300×20%で60兆円。それに加えて無駄な公共事業を減らし、年金・生活保護・その他補助金を廃止してBIに統合。こうすれば何とかなるのではないか、と。
ジャーナリスト長谷川幸洋「社会保障制度では国民合意は無理」
確かに理論としては、いけそうではある。パネラーの経済ジャーナリスト・須田慎一郎もホリエモンのこの考えに「大アリ。やろうと思えばすぐできる」と賛成した。
「社会保障を考える上で重要なのは負担と給付。今保障費の給付っていうのは年間100兆円。医療費は30兆円。医療費は必要だから引くと70兆円。70兆円を人口で割ると月額5万円。今すぐにでもできますよ」
桂ざこばも「今、働いてますね? それを維持した上で8万円入るのに、なんで反対しなあかんのん?」とコメントした。
しかし、ジャーナリストの長谷川幸洋は「社会保障制度では国民合意は無理」、国際政治学者の村田晃嗣も「予算的に無理」など、現実的には不可能に近いと主張するスタジオメンバーの意見は多い。何よりも問題なのは、辛坊治郎のこの指摘だ。
「最大の問題は、今の圧倒的多数の高齢者の収入が激減するということ。そういう人たちが(年金も生活保護も全て廃止にして)月8万円で納得するかということ・・・。今のお年寄りに殺されますよ?」
感情に訴えるプレゼンに、理屈王・ホリエモンの成長
確かに、最大の壁はソコにありそうだ。新しい取り組みを行うためには、必然としてそのシワ寄せがどこかに出てくる。それを圧倒的多数かつ強い影響力を持つ今の高齢者たちが、受け入るかどうか。結局「勤労意欲がなくなるのでは?」という竹田恒泰の指摘にも、
「BIがあることで今まで二の足を踏んでいた起業などにもチャレンジしやすくなる。BIは逆に勤労意欲を上げる」
と返したホリエモン。稼いだお金は全て投資するため、全然お金がないという彼だが、「僕だけがいい思いをするためならこんな提案しない」と、BI導入後は毎月給付される8万円は寄付に回すという。
これには「何となく堀江さんが……(信用できない)」と導入反対派だった山口もえも心を動かされ、最終的にはホリエモンのBI導入案を「アリ」とした。山口のこの変化に思わずホリエモン、しみじみとこの一言。
「感情ってやっぱすごい大事なんだナ……。俺はずっと論理で考えていたけど」
そこには、理屈王・ホリエモンのちょっと成長した姿があった。
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