「保険クリニック」のアイリックコーポレーション 業界未経験者を「保険IQシステム」で戦力化、店舗数拡大目指す

(左から)アイリックコーポレーション 竹田光浩部長、深山恵梨さん、繁森名那さん
アイリックコーポレーションは、日本初の来店型保険ショップ(現「保険クリニック」)を1999年に開設した会社です。保険分析・検索システム「保険IQシステム」を2004年に開発し、東証マザーズ(現グロース市場)上場を2018年に果たしています。
2023年には生命保険乗合代理店として、生命保険協会の「業務品質評価運営」の認定代理店となりました。顧客本位の業務運営を進める同社は、現在どのような戦略のもとで、どのような人材を求めているのか。同社総務人事部キャリア採用担当のみなさんに話を聞きました。(文・構成:キャリコネニュース編集部)
直営店とフランチャイズ加盟店で「500店舗を目指す」

アイリックコーポレーション 総務人事部長 竹田光浩:外資系生命保険会社にて約30年間、営業ライン・研修部門・コンプライアンス部門の部門長を歴任。2017年に当社に入社し、内部監査室長を経て、現在は総務人事部の責任者として採用活動を統括する。
――御社は現在どのような事業を行っていますか。
竹田 2025年7月から事業セグメントを従来の3つから、「保険クリニック事業」「FA事業」「ソリューション事業」「システム事業」の4つに増やしています。
1つ目の保険クリニック事業は、当社が運営する来店型保険ショップ「保険クリニック」の直営店運営が中心です。現在87の直営店を全国展開しており、お客様に保険を販売することで保険会社から手数料を得るビジネスモデルです。
これと並行して、フランチャイズ事業も行っています。加盟店が自ら集客し販売した場合に発生するロイヤリティのほか、当社が紹介したお客様が成約すると別途手数料が得られるビジネスモデルで、加盟店は全国に200店舗弱を展開しています。
FA(ファイナンシャルアドバイザー)事業は、今期から新設されたセグメントです。保険にとらわれず、さまざまな金融商品をお客様にご案内する総合的なコンサルティングを行う事業で、今後の成長が期待できるため新たに独立させています。
ソリューション事業は、当社が「保険クリニック」で使用している「保険IQシステム」の汎用版「ASシリーズ」や、当社で開発したAI-OCR技術を活用した「スマートOCR」を、全国の保険代理店や保険会社、金融機関等に販売してシステム利用料を得ています。この事業には、保険業界全体をよくしていきたいという願いも込めています。
システム事業は、その名の通りITシステムを開発する事業で、「保険IQシステム」の開発を行うほか、他社や代理店向けのシステム開発などを受託し、開発費や利用料を得ています。

2031年6月期までに500店舗を目指す
――現在はどのような戦略を採っていますか。
竹田 来店型保険ショップ業界は、100店舗以上を展開する6社の売上高が全体の過半数を占めています(矢野経済総合研究所調べ)。当社の保険クリニック事業は業界第3位のポジションにあり、今後は直営店とフランチャイズ加盟店を増やしてさらに業績を伸ばしていく方針です。
具体的には、自社の店舗開発とM&Aを通じて「2031年6月期までに500店舗を目指す」という目標を掲げています。現在の300店舗弱からの拡大は、年間30店舗以上の新規出店を意味しますので、かなり野心的な計画といえます。
この拡大戦略を支えるのが、25年を超える来店型保険ショップの運用実績と強固な基盤です。「保険IQシステム」によりコンサルタントの能力を標準化できていることや、来店者に占めるWeb集客の割合が45%と効率的な集客ができていることが強みです。
新規出店の投資回収についても、一般的な新規店舗の投資回収期間が約2年と効率的な収益モデルが確立しています。これは「保険クリニック」のブランド力とノウハウ、そして「保険IQシステム」を中心とする人材育成力によるものです。
創業者の思い「保険商品はお客様自身が納得して選ぶべき」

アイリックコーポレーション 総務人事部 深山恵梨(ふかやま・えり):理容師としてキャリアをスタートし、人材業界での営業・人事、製造メーカーでの広報を経て2025年に入社。現在はキャリア採用を担当し、採用戦略の立案から広報まで、採用に関わる幅広い業務に携わっている。
――「保険IQシステム」とはどのようなものなのでしょうか。
深山 「保険クリニック」では、保険商品を約50社も取り扱っています。保障内容も変化しますので、従業員がすべての商品を記憶し、お客様の要望に基づいて最適な商品を即座にご提案するのは、人間の力だけでは困難です。
「保険IQシステム」は、ご加入中の保険の保障内容がビジュアル化できる「証券分析」機能と、お客さまのご希望で検索した保険商品を同じフォーマットで並べられる「比較」機能が大きな特長です。「証券分析」機能では、約50社の各商品をグラフで表示させることができます。「比較」機能は、連携している25社(2025年9月時点)の中からご希望に沿った保険商品を検索し、横並びで比較することができます。
お客様にわかりやすく保険をご案内できるツールであり、経験が浅いコンサルタントでも比較表を見ながらお客様にご案内できるようになっています。こうした背景もあって、現在は保険業界未経験の方を積極的に採用しています。
また、「保険クリニック」のように複数の商品を扱うショップでは、インセンティブが高い特定商品を優先的に紹介する懸念が示されていましたが、「保険IQシステム」は、お客様のご意向が自動的に反映されるので、フラットな視点でのご提案をを担保するシステムとしても評価されています。

「保険IQシステム」が大きな強み
――「保険IQシステム」はどのような経緯で開発されたのでしょうか。
深山 創業者である勝本竜二社長は、「保険商品は売りつけられるものではなく、お客様自身が納得して選ぶべき」と考え、信用金庫や外資系生命保険会社での勤務を経て、お客様が複数の保険商品を比べて契約できる来店型ショップを立ち上げました。
あわせて公平な商品比較システムを構想しましたが、手作業や表計算ソフトによる保険証券分析では膨大な時間と手間がかかっていました。そこで当時SEとして独立したばかりの実兄・勝本伸弘(現取締役)に協力を仰ぎ、約1年半をかけて初版を完成しました。
竹田 その過程では資金繰りに苦労し、当時の従業員たちから「社長の道楽」と揶揄されたこともあったようです。システムに入力するデータ提供も保険会社の協力をなかなか得られず、地道な説明会や交渉を繰り返したと聞いています。
このような創業者の「お客様に保険の選択肢と納得感を届ける」「保険流通の新たな標準を創る」といった信念は、現在の「保険IQシステム」の開発や、当社の「お客さま本意」の経営方針に受け継がれています。
ブライダルやアパレル、介護業界の出身者も活躍できる理由

新規出店を支える「投資回収力」と「人材育成力」
――現在どのようなキャリア採用に注力していますか。
深山 「保険クリニック」で勤務する保険コンサルタントをメインに募集しています。営業経験や接客経験、販売経験がある方を中心に、保険業界での経験や保険の知識は問わない方針を掲げています。
未経験者歓迎の理由は、当社の「保険IQシステム」があればこれまで保険を扱ってこなかった方でも簡単にコンサルティングができることと、これを活用した当社の研修制度が非常に充実していることがあげられます。
実際に未経験で入社した社員の成功事例も増えており、「誰かのために頑張りたい」という思いがある方、例えば前職がブライダル業界の方、アパレル業界の販売職だった方、介護業界の出身者は親和性が比較的高く、活躍されている方が多い印象です。
また、これまで1社専属の保険会社で働いていた業界経験者も大きく成長されています。これまでは限られた選択肢の中からご提案していたのが、当社では約50社の中からお客様のご意向に合わせたご提案ができるようになり、実績が大幅に伸びたという話を聞いています。

アイリックコーポレーション 総務人事部 繁森名那(しげもり・なな):2022年新卒入社。保険クリニックのコンサルタントとして3年間従事し、4年目となる今期より総務人事部へ異動。現在は主にコンサルタント職(直営事業部)のキャリア採用を担当し、現場目線を活かした採用活動に取り組んでいる。
――研修はどのようなメニューで行っているのですか。
繁森 経験者と未経験者で研修の期間を分けています。同じようなスタイルの来店型保険ショップでの経験者は1カ月間、1社専属の保険会社で働いてきた方や保険業界未経験の方は習得度合によって2~3カ月間の研修を行っています。
内容は、「保険IQシステム」の使い方から、実際のお客様との相談の組み立て方、初回でどんなことを聞くか、どのように提案をするか、どのようにクロージングするかという内容をじっくり身につけていただくプログラムです。
当社には研修を専門に行う「教育研修部」があり、配属前の研修は教育研修部が担当しています。配属後は、直営店舗の責任者やエリアのマネージャー、優績者などから情報共有や研修を継続的に行っています。
――店舗を訪問するお客様はどのような層なのですか。
繁森 店舗によって差はありますが、ファミリー層が中心で、新婚の方や、これからお子様が生まれるご家庭、住宅購入を検討されている方などが中心です。もちろん、単身の方や、定年を迎えこれからの暮らしを見直したい方もいて、幅広いお客様が来店されています。
ご相談の流れは、まずは1回目でお客様のお話をじっくり聞くことを重視し、2回目でご要望を踏まえたご提案をさせていただきます。そのうえでお客様に十分検討していただいて、3回目で決まる、というケースが多いです。
「女性部長の比率」6割近くでランキング上位

ショッピングモールなどへの新規出店を積極化
――保険販売は女性が活躍しやすい職場と言われます。
深山 現時点でも若い女性からも数多くの応募をいただいていますが、当社は「女性が多く活躍している職場」として、厚生労働大臣による企業認定制度「えるぼし」の最高位を2020年に取得しています。
「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの評価項目について、すべての基準をクリアし、女性が活躍できる職場環境を整えていると評価されています。東洋経済オンラインが2024年5月に発表した「女性部長の比率が高い会社ランキング」でも、当社は第5位にランクインしています(女性部長比率57.1%、2023年データ)。
最近は店舗拡大に伴い、店長やエリア統括などの管理職ポジションにつけるチャンスが急増し、「前職では上が詰まって昇格できなかった」という理由で転職して来られる大手企業の出身者もいます。このように、当社には性別関係なく自分の頑張り次第でキャリアを築ける環境があります。
――新入社員の活躍を支援する施策は何か行っていますか。
繁森 これまでは店舗内の交流はあっても他店舗とのつながりが少なく、相談相手のいない社員が孤独を感じてしまう課題がありました。このため、数年前からは経営陣が各地の店舗に訪問し、エリアごとにオンラインや対面で研修やミーティングを実施して、縦横のつながりを強めています。
また、これまでは個人プレーに頼る部分もあったのですが、最近は未経験のコンサルタントでも万全の体制でお客様との面談に挑むことができるよう、「チームコンサルティング」を掲げて体制を整えています。
例えば、自分が受けたお客様の相談内容を店長や同僚と共有し、どのようなプランがベストなのか、次回来店時にどのような提案をすればよいか、などを意見交換する取り組みが頻繁に行われています。
――力を入れている採用手法はありますか。
深山 リファラル(社員による紹介)採用の割合が高いのが当社の特徴です。特に保険業界の経験者が「保険IQシステム」を使った営業スタイルを気に入り、「よかったらうちの会社に来れば?」と知り合いを誘ってくれるパターンが多いです。
入社した方から特に評価が高いのは、保険営業でありながら基本給がしっかりあることです。保険業界の営業はフルコミッション(成功報酬型)が多く、特に家庭を持っている方から「収入の安定性があって安心して働ける」と好評です。
また、一般的な保険の営業担当者ですと、常に携帯電話を手放せずに夜遅くまでお客様とお電話することがありますが、当社のような来店型ショップは営業時間が決まっており、ワークライフバランスが整っているところも大きな魅力とのことです。
保険業界の「悪しき見られ方」を変えたい

接客力を活かしてキャリアチェンジしたい人を募集
――今後はどのような取り組みを考えていますか。
竹田 業界の変化に対応し、お客様に寄り添った提案をさらに進めていきたいと考えています。現在、保険業界には募集品質の問題などさまざまな課題があり、代理店の募集品質や顧客本位の提案体制強化などが主な内容の保険業法の改正が、2025年5月に国会で成立したばかりです。
当社は創業以来、お客様に寄り添った提案をしていくという思いを大切にしており、「保険IQシステム」の開発などの取り組みを続けてきました。日本初の来店型乗合保険ショップチェーン(※)や保険比較・検索システムなどの事業も、顧客目線による産物といえます。
※店舗数11店舗以上または年商10億円以上をチェーン店と定義。東京商工リサーチ調べ(2018年6月)
事業セグメントの変更に合わせて、2025年7月に大規模な組織体制の変更も実施しました。これにより各事業セグメントがより機動的に動けるようになり、創業時から変わらぬ「保険業界の悪しき見られ方を変えたい」という思いの実現に向けて、さらに加速していけると確信しています。
また、従業員の待遇改善も進めたいと考えています。社内では年に一度満足度調査を実施していますが、会社や先輩・同僚、横の部署との連携で風通しがよく、相談しやすいというところは高く評価いただいており、直接そういう声も聞いています。
これに加えて、基本給のベースアップや従業員持株会の報奨金のアップなど、経済的な処遇改善も積極的に実施しています。必ずしもすべての人がそうなるとは限りませんが、他業種から転職し給与を増やしている方が多くおりますので、お客様に喜んでいただくのが好きな方、チームワークを活かして努力や工夫をし続けたい方、接客力を活かしてキャリアチェンジしたい方の応募をお待ちしています。


