断言!「わーすた」は現代アイドル界の最高到達点 スキルを誇示しない圧倒的な余裕と上質すぎるステージング

※画像はわーすた公式サイトのスクリーンショット
アイドルファンの間でも、2026年現在の彼女たちを「正当に」評価できている人間がどれほどいるだろうか――。先日、今冬での解散を発表した「わーすた」について思うところがたくさんあったので色々と書いてみる。
私は元々はハロヲタだ。大好きだったBerryz工房が2015年に活動休止して以降は、ハロー!プロジェクトの後輩グループを「ゆるく」眺めて、時折現場に行くといった感じだった。
ハロプロ以外のアイドルも多少は把握していたが、特定のグループを熱心にチェックするということはなかった。そんな私を変えたのが2024年、自宅近くのショッピングセンターで偶然目撃した、わーすたのリリースイベントだった。
「意外と上手いな。ダンスもきれいだし」
これが最初の印象だった。上から目線で申し訳ないが、ハロプロ原理主義者だった私は「生歌でがっつり歌えるアイドルはハロー以外にはそういないだろう」という思い込みがまだどこかにあったのだ。
しかし、猫耳を付けた彼女たちが「さらっと」こなしていたのは、実は現代のアイドル界でも最高クラスの技術の応酬だった。そこから楽曲を覚え、ファンが撮影したライブ動画(わーすたは基本的にライブやイベントでのスマホ撮影が可)を漁り、自分でも現場に足を運ぶようになった。(文:ロベルト麻生)
「アイドル界のスティーヴン・タイラー」の暴れ方
わーすたのことを改めて説明すると、彼女たちは2015年に結成された、エイベックスのアイドルプロジェクト『iDOL Street』のグループだ。グループ名は『The World Standard(世界標準)』の略。日本の「かわいい文化」を世界に発信すべく、猫耳をトレードマークに国内外で活動してきた。なお、デビュー時は5人だったが、2021年以降は4人体制となる。
わーすたのエース、三品瑠香のことを私は「アイドル界のスティーヴン・タイラー」だと思っている。「9頭身」の美少女という外見を裏切る、攻撃的な「がなり」。そして、メロディをあえて壊し、感情を注入する「崩し」のセンス。「歌が上手いアイドル」という言葉では片づけられない魅力にあふれている。
特筆すべきは、そのリズム感だ。ハロプロのアイドルがR&B的な「タメ(後ノリ)」を美学とするならば、三品のリズムは「前のめり(前ノリ)」でロック的だ。一般的には後ノリのほうが余裕があって上手く聴こえる。一方で、前ノリは前過ぎると「走っている」と捉えられ、粗いとされる。成立させるには技術とセンスが必要だ。
三品はこのあたりのコントロールが抜群に上手く、これが楽曲に強烈なドライブ感を与えている。同じ曲を歌ったとしたら、わーすたは他のアイドルよりBPMが10ぐらい速く聴こえるんじゃないだろうか。
そんな彼女の真価はロック系の楽曲でこそ発揮される。『メロメロ!ラヴロック』では前ノリ的なドライブ感が際立つ。なお、この曲では歌いだしがリーダーの廣川奈々聖で、続いて歌っているのが三品だ。
続いて『PLATONIC GIRL』では、それこそエアロスミス的な崩しが展開される。この曲については色々なライブ動画を観たが、この8周年ライブではかなり大胆に崩していて、初見時は「え、ここまでやるの!?」と驚かされた。
この『PLATONIC GIRL』は、定番曲というよりも、ここぞというライブで投入される“切り札”的な楽曲だ。そして、冒頭から三品ががなり、落ちサビで最高潮に達する『萌ってかエモ』も強烈だ。
これらの曲は三品の崩し方、がなり方が毎回違うので、ライブ動画を見て「今回は若干タメてきたな」「いつもより激しいな」とチェックするのが楽しい。
もちろん、バラードをしっとり歌い上げたり、動きが細かい曲をカッチリ歌ったりすることもできる。瑠香ちゃんは本当に素晴らしい。控えめに言って天才だと思う。
王道アイドルと崩しのシンメトリー
三品とともにメインボーカルを務めるリーダー、廣川の存在も大きい。廣川の歌唱は徹底して「王道アイドル」であり、楽曲の安定感を担っている。前出の『Platonic Girl』では、廣川が足元を固めて、その上で三品が暴れまくるという対比が面白い。
さらに、可愛い声の松田美里と、ささやくような柔らかい声質の小玉梨々華が楽曲の中でいいアクセントになっている。この4人のバランスがいいのだ。少し前にTikTokでバズり、つい先日YouTubeで100万再生を突破した「君とtea for two♡」では小玉のささやきボイスが主軸になっているので、ぜひ聴いてもらいたい。
なお、松田はアクターズスクール広島出身。ダンスがしなやかで美しい。一方で小玉は見た目こそ「きれいなお姉さん」風なのに、MCでは一番様子がおかしい。彼女にマイクが回るたびに「また今日も変なことを言うんじゃないか」と期待が高まる。ライブでの楽しみの一つだ。
難しいことを「さらっと」こなす美学
そして、そんな彼女たちのパフォーマンスのベースには「身体レベルで染みついた技術」がある。『iDOL Street』での研修で10代の早い時期から鍛え上げられた彼女たちは、一般人がカラオケで歌えば絶望するようなトリッキーな難曲を、笑顔で、そして「さらっと」こなしてみせる。
ものすごいスキルなのに「頑張ってます!」感が一切ないから、こちらも観ていて疲れない。気負わずに楽しむことができる。まるで、ベテランジャズミュージシャンの定例セッションを観ているような感じ、といったところだろうか。この「難しいことを難しく見せない」ホスピタリティこそが、最高に贅沢なエンターテインメントなのだ。
あと、これも書いておきたいのだが、わーすたは衣装のクオリティが高い。猫耳必須という制約があるので基本的には“可愛い系”のデザインが多い。しかしただ可愛いだけでは終わらない。ゴテゴテしたデザインであっても、装飾の細部の作り込みや素材のテクスチャーがしっかりしており、見ていて楽しい。直近だと『わーすどすたんだーど』(2025年)の大量フリルのガーリーな衣装が印象的だ。
これを10人規模のグループでやれば、どうしても情報量が過剰になってしまうだろう。その点、4人という少数精鋭の編成だからこそ、この装飾量がちょうどよく作用し、ステージ全体に適切な密度と説得力を与えている。
「マジでトリケラトップス強い」の衝撃
さて、そんな彼女たちの技術が、どんな楽曲に注がれてきたのか。これについても触れると、初期は『いぬねこ。青春真っ盛り』『NEW にゃーくにゃくにゃ水族館2』といったポップでトンチキな、いわゆる“電波系”に分類されるような曲が多い。
歌詞がひたすらカオスで、初期の代表曲の一つ『うるとらみらくるくるふぁいなるアルティメットチョコびーむ』に至ってはサビは
「マジでトリケラトップス強い」
である。これがどうやって企画会議を通ったのかが謎だが、現在もライブで盛り上がる定番曲となっている。三品のシャウト、「これでも喰らえ!」でテンションが上がる。
ちなみに、これらを手掛けた当時のサウンドプロデューサー、鈴木まなかは最近、Snow Manの爆発的ヒット曲『カリスマックス』の制作にも参加していた。
「王道の恋愛ソング」が全く“王道”ではない
2019年前後からは、現在のサウンドプロデューサー・岸田勇気が中心となる制作体制への移行もあり、表現が少しストレートになった。
ただ、どの曲もやはりどこか変だ。2024年のシングル『夏恋ジレンマ』は「王道の恋愛ソング」といった触れ込みでリリースされたが、イントロこそゆったりして可愛いものの、すぐにリズムが倍テンになりBPMは170超に。途中で、ドラムとギターの刻みが一瞬メロスピっぽくなる。リズムの緩急が強烈なのと、そこにシンコペーションが加わることで、聴覚上は速くなったり遅くなったりしているように感じられる。
つまり、可愛い曲なのによく聴くと結構トリッキーなのだ。これを“王道”と表現するあたり、制作側もメンバーも感覚がバグっている。この曲を歌って踊って、かっこよく仕上げられるのはわーすたぐらいしかいないのでは、と思ってしまう。
ちなみに、お勧めの音楽作品としてはライブアルバム『わーすた6周年ライブ~会場まるごと ROCKYOU~』(2021年)を推したい。ライブ映像から音源だけを持ってきたような作品だが、生バンドの演奏が素晴らしく、音だけで十分楽しめる。デビューから2021年までのベスト的なセトリになっており、入門としても最適だ。冒頭から『萌ってかエモ』で三品ががなっている。各種音楽サブスクサービスやYouTubeで聴ける。
“今が一番いい”という中での幕引き
わーすたは今、11年という歳月をかけて最高到達点に達した。猫耳をつけたポップな世界観で、現在人気になっている“かわいい系アイドル”の先駆者的な文脈で語られることも多い。それは間違っているわけではないのだが、私は彼女たちの本質は別のところにあると思っている。猫耳に騙されてはいけないのだ。ハロプロをはじめとした生歌系アイドルを愛する人にこそ、この上質なステージを目撃してほしい。
解散発表があった3月27日の11周年ライブは配信でチェックした。パフォーマンスもビジュアルも最高レベルに仕上がっていて、思わず「いやー、これで解散はもったいないよなー」と声が出た。しかし、今が最高クラスのクオリティだからこそ、このままきれいに終わらせようとしているんだな、とも思った。
廣川は3年前のワンマンライブで、武道館を目指すと宣言していた。今のところ、その目標は達成できていない。今回の解散発表後、廣川は「ここから活動を終えるまでに、本当は叶えたかったけど、叶えられずに終わってしまう夢もあります。ごめんね」とコメントを出していた。
ファンとしては複雑な気持ちだ。わーすたは確かにもっと人気が出てもいいグループだ。スキル、楽曲、ビジュアルがここまで高度にまとまっているグループはなかなかない。贔屓目ではあるが、毎年とは言わなくても数年に一回、武道館公演をやっていてもおかしくないレベルのグループだとは思う。
しかし最終的にどこまで人気が出るか、集客できるかはメンバーの努力、実力云々ではなく時代のトレンドや空気感だったり、事務所がどこまで力を入れるかだったりで変わってくる。
2024年に『君とtea for two♡』がバズったときに事務所が思い切って予算を投入し、攻勢をかけていればもっと大きなムーブメントを狙えたのでは――そう思うこともあった。しかし、アイドルをはじめとしたエンタメ業界は理屈通りにやれば必ず成果が出る、というものでもない。
そもそも大手の事務所であっても、日本的アイドルを大々的に展開していくモデルを得意としているところは、実はそれほど多くない。だからこそ、もどかしい。どうすればよかったのかが、わからない。
ただ、このまま“知る人ぞ知る”アイドルで終わってしまうのはあまりに惜しい。一人でも多くのアイドルファンに彼女たちの魅力が伝わるよう、今さらではあるがこうして記事を書いた次第だ。
恐らくラストとなる次のシングルは9月2日に発売される。すでに各地でリリースイベントが始まっている。ライブツアーも組まれるはずだ。YouTube上には公式MVだけではなく、ファンが最前で撮影したライブ動画が大量にアップされている。気になった人は、まずは軽くでいいのでぜひチェックしてみてほしい。


