25年前の「事件」から何も学んでいなかった電通 OBも「サービス残業を武勇伝のように話す洗脳社員がいた」と告発 | キャリコネニュース
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25年前の「事件」から何も学んでいなかった電通 OBも「サービス残業を武勇伝のように話す洗脳社員がいた」と告発

大手広告代理店、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が、2015年12月に自殺したのは長時間労働やうつ病と推定されるとして、9月末に過労死認定された。

電通の過労死自殺が大きく注目を集めるのは今回が初めてではない。1991年に入社2年目の男性社員が自殺した、いわゆる「電通事件」も多くの人に知られているが、高橋さんの事件を見る限り企業体質が変わったとは言えないようだ。

最高裁までもつれ込み、最終的に1億6800万円の賠償金で決着

電通本社ビル(記者撮影)

電通本社ビル(10月11日撮影)

厚生労働省のメンタルヘルス系ポータルサイト「こころの耳」によると、1991年8月、入社2年目の社員が過労の果てに自宅で自殺した。

入社数か月後から長時間の残業があり、深夜に帰宅することが多かったが、1年目の冬から帰宅できない日があるようになり、2年目には顔色が悪い状態になっていた。異常行動も見られたことから、うつ病に罹患していたと見られるという。

亡くなった男性の両親は安全配慮義務を怠ったとして、同社を相手に裁判を起こし、判決は最高裁までもつれこむ。男性の自殺から約10年経った2000年3月、同社は原告に対して1億6800万円の賠償金を支払うことで和解した。

この事件で最高裁が「会社は過労で社員が心身の健康を損なわないようにする責任がある」ことを認め、これが後の司法判断の基準となった。

「古い体質を脱せないままに根性で乗り越えることだけを求める」

だが、悲劇は繰り返された。自殺した高橋さんのツイッターには、

「休日返上で作った資料をボロくそに言われた もう体も心もズタズタだ」
「部長『君の残業時間の20時間は会社にとって無駄』『髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな』『今の業務量でつらいのはキャパがなさすぎる』」
「1日20時間とか会社にいるともはや何のために生きてるのかわからなくなって笑けてくるな」

など、仕事の苦しみに関する投稿が多くある。高橋さんの月間残業時間は最大で105時間に及び、早朝に帰宅することも。こうした労働環境に限界に来た高橋さんは12月25日、自らの命を絶ってしまう。

元電通社員の起業家、藤沢涼氏は自身のブログで事件に言及した。同氏は2001年に入社。電通事件の判決が出たことを受けて、労働環境が改善していることを期待していたが、

「おまえは奴隷だ、発言権は無い」
「おまえに残業をつける権利があると思うな」
「終わるまで帰るな、寝るな」

などの暴言を吐かれたほか「業務中に、突然、殴られ、蹴られ、恫喝される」ということもあったという。200時間残業しても、「36協定の70時間以上は(残業代を)つけてはいけない」ということが暗黙の了解になっていたという。しかも、「そのサービス残業を武勇伝のように話す洗脳された社員も多数いました」と書いている。

「テクノロジーの進化が人間のリテラシーを超え、マネジメントが追い付かない中で、電通は古い体質を脱さないままに根性で乗り越えることだけを若い社員に求め、『不正請求』や『過労死』を起こしたのです」

と電通の企業体質を批判した。

同社のCSRでは今時の企業らしく、「従業員の労働負荷低減」や「労働環境の整備」を掲げている。さらに、長時間労働に関しては「社員の健康被害、生産性低下などが生じる可能性がある」とし、ノー残業デーの設定や有休の計画的取得推進を対策として掲げているが、その甲斐なく、結果的に一人の命が失われてしまった。電通は労働環境の改善に本気に取り組んでほしいと願うばかりだ。

あわせてよみたい:教員の悲惨な労働環境

※ウェブ媒体やテレビ番組等で記事を引用する際は恐れ入りますが「キャリコネニュース」と出典の明記をお願いします。

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