自己都合退職での失業手当拡充が見送り 「パワハラで戦略的に辞めさせる企業もあるのに」と波紋
会社を辞めた際のセーフティーネットとなる失業手当。その給付日数の見直しが12月8日、厚生労働省の労働政策審議会で行われた。
時事通信の12月8日付けの記事によると、倒産や解雇で離職した人などの失業手当の給付日数を拡充する一方で、自己都合で離職した人への給付拡充を見送る。同省は法改正を経て2017年度に実施するというが、ネット上には波紋が広がっている。
厚労省は「安易な離職を防ぐため」と見送り理由を説明
厚労省が9日発表した資料によると、背景には、倒産や解雇など会社都合で離職させられた「特定受給資格者」と呼ばれる人の所定給付日数内での就職率の低さがある。
現状では、被保険者期間が1年以上5年未満の30歳以上35歳未満、同35歳以上45歳未満の就職率が、他の年齢層に比較して低いという。
現状ではどちらも給付日数は90日だが、30歳以上35歳未満では120日、35歳以上45歳未満は150日に拡充する。また、雇い止めにより離職した「特定理由離職者」に対しても、暫定的に2021年度まで特定受給資格者として扱われ、給付日数が延びることになる。
一方、給付拡充を求められていた自己都合退職への対応は見送られた。現在、自己都合退職の場合は被保険者期間が1年以上10年未満では90日、同10年~20年未満では120日、同20年以上では150日間が給付日数となっているが、会社都合退職の場合の給付日数、90日~330日と比較すると明らかに少ない。
見送りの理由について厚生労働省職業安定局雇用保険課の担当者はキャリコネニュースの取材に対し、
「自己都合退職の場合、辞めることが事前にわかっています。また、安易な離職を防ぐ意味もあります」
と説明した。
POSSE今野氏は「今回の差別化には疑問が残る」と指摘
ネットでは、「当然でしょ」「生活の当てがあるから離職したんでしょ」など見送りを支持する意見がある一方で、
「自己都合で辞めさせるために、戦略的にパワーハラスメントで辞めさせる企業が多いのに」
「今時の企業は解雇を自己都合扱いにする。そのため、自己都合で保険がおりなくなれば、とんでもないことになりますよ」
などの反論が多く見られる。実質的な解雇なのに、後々のトラブルを避けるために無理やり自己都合に会社も少なくない。「本当の自己都合かどうかを判断する部署が必要になるかもしれませんね」と書く人もいた。
労働相談などを行うNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏は、ヤフーニュースに配信された時事通信の記事に、「『自己都合退職』で辞める若者の割合は全体の7割に上る。その理由は離職理由が記載された『離職票』を企業側が作成するからだ」という書き出しで投稿。
今野氏によれば、「本当は解雇なのに自己都合扱いにされた」という相談がかなり寄せられるという。企業が会社都合を避ける要因の一つに補助金がある。事業主都合による解雇が多いと、補助金の支給が得られないためだ。また、「訴訟リスク」に備えるためもあるという。企業側が従業員をパワハラなどで追い込み、自己都合退職させる、という実態も紹介し、
「『自己都合退職』には不当なものがかなり含まれており、今回の差別化には疑問が残る」
と糾弾していた。