道徳教科書の検定問題、文科省がネット上の批判に反論 「パン屋が和菓子屋に変更になったのは出版社の判断」 | キャリコネニュース
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道徳教科書の検定問題、文科省がネット上の批判に反論 「パン屋が和菓子屋に変更になったのは出版社の判断」

「パン屋」は「和菓子屋」に、「アスレチック」は「和楽器店」に――3月24日に発表された小学生向け道徳教科書の検定結果に、ネットが騒然としている。国や郷土を愛する心を育む上で不適切とされ、変更になったというものだ。朝日新聞などが報じ、ネットでは「戦前かよ」「さっぱり意味が分からない」など、批判と驚きの声が相次いでいる。

いったい何がどうなっているのか。キャリコネニュースでは、文部科学省初等中等教育局の教科書課に取材を申し込んだところ、担当者からこうした声が返ってきた。

「色々なことが言われていますが、文科省がパン屋を和菓子屋に修正するよう指示した訳ではありません。修正箇所はあくまでも出版社の判断に基づくものです」

パン屋が相応しくないのではなく、書籍全体で「郷土愛」に不足があったと主張

道徳が新たに教科化されるにあたり、文科省も出版社も、手探り状態であることが伺えます。

道徳が新たに教科化されるにあたり、文科省も出版社も、手探り状態であることが伺えます。

小学校の道徳は2018年度から「特別の教科」とされ、成績評価の対象となる。今回の検定は、この教科化に伴い初めて実施されたものだ。

文科省の担当者は、ネット上の批判は誤解だと言い、こう説明する。

「道徳の学習指導要領では、最低限教えなければならない項目を学年ごとに19~22個定めています。パン屋が和菓子屋に修正された教材は、検定時に書籍全体として『我が国や郷土の文化と生活に親しみ,愛着をもつこと』という項目の、特に『我が国』の部分の記載が充足していませんでした。そのため、教科書全体を通してこの部分を記載するよう指摘したまでです。パン屋の個所が悪いという意図はありません」

つまり、パン屋を個別に指摘したのではなく、指摘を受けた出版社側が自主的にこの個所を選んで修正した結果という訳だ。

この教科書を提出した出版社は「確かに、教科書全体として『我が国』に該当する部分が充足していないとの指摘を受けました」と、事の経緯を話す。

「まず、話題になったのは祖父と一緒に近所を散歩する女の子の話です。事前に学習指導要領をチェックし、小学生に身近な国土とは何かを考え、話の中で神社やイチョウ並木などを登場させていましたが、不十分だったようです。そのため、友人の家が営むパン屋に立ち寄る場面を、和菓子屋に変更しました」

と述べる。和菓子屋を選んだのは、和菓子の「日本文化的である点と、四季の変化が表現されるという特徴」が、項目を充足させるために相応しいと判断したからだという。

出版社「指摘内容によっては対応できる部分が決まってくる」

パン屋の記述外にも、「わが国や郷土の文化」という視点が不足していると指摘された教材は多々ある。学研教育みらいの『みんなのどうとく』(1年)もその1つで、公園のアスレチックの写真が和楽器店に変更された。同社の編集部は、

「和楽器店よりアスレチックのほうが子供達にとっては身近だと思いますが、検定を通過するためには指摘された意見を反映させなければいけませんので、こうした差し替えをしました」

と苦労を滲ませる。他のページでも、土手で花を見る写真を、公園で親子が凧揚げをしている写真に変更したという。検定意見を受けてから再提出するまでの35日間で6学年すべての教材を作り直さなければならないため、元々の話のあらすじを損なわずに意見を反映させるには、写真の差し替えが最適という結論に至ったのだ。

ただ、教科書検定そのものについては

「変更箇所の具体的な指示はありませんが、内容によっては対応できる部分が決まってくるのは事実です。また、指摘された項目は前回の指導要領改訂で新設されました。1年生が何をもって『国』と意識するのかは、難しいのではないでしょうか」

と疑問を呈した。他の教科書会社の編集者も「あらかじめ必要な項目をチェックして作りましたが、思っていたよりも厳密に指摘がありました」と、初めての検定を振り返る。

今回検定に申請された教科書は24点で、その全てが合格になった。2018年度から使用が開始される。

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