解消しない待機児童問題 4月から復職希望でも、13%は預け先が未定 うち24%は職場復帰を断念
妊娠・出産・育児情報サイトを運営するベビカムは3月28日、2017年に保育園への入園を希望する人を対象にした、アンケート調査の結果を発表した。現在妊娠・育児中の986人が回答した。
「税金はたくさん払っているのにどこにも入れないなんて」
現在の就業形態を問う質問では、「産休中、育休中」が40%と最多で、次いで「フルタイムの正社員、職員、公務員」が24%、「仕事はしておらず、産休や育休中でもないが、いずれは仕事をしたい」が21%だった。「求職活動中」も4%おり、90%以上が仕事をしているか、これからしたいと希望しており、子供を持っても働きたい気持ちは強いことが分かる。
「産休中、育休中」「いずれは仕事をしたい」「求職活動中」と答えた人の45%は今年4月の入園に向けて保育園を探しており、そのうち8割は、認可保育園、認可外保育園、幼稚園などの預け先が決まった。しかし、13%は「子どもを預ける施設は決まらなかった」と答えている。
決まらなかった人たちに今後どうする予定かを複数回答で聞いたところ、「預け先が決まるまで仕事復帰を延長する」が70%と最多、24%は「職場復帰(開始)を諦める」とも答えている。保育園などの預け先が見つからないことで、仕事に支障が出ている様子が浮き彫りになった。
アンケートでは保育園探しの際の体験談も寄せられており、
「求職中だと入れる確率が下がるのは不満。育休だとお金をもらえたり、手当があるけれど、一から仕事をまた探す人はそんなのないから大変なのに…。預けるところがないと就活なんてできない」
と嘆く。自治体の対応への不満の声もあり、
「市役所へ行っても対応が人によって違い、前回言われたことと違うことが多い。そのおかげで書類を一からまた集め直さなくてはいけなくなった」
「市役所に相談に行ったら、小学校に上がるまで保育園にも幼稚園にも入れない可能性もあると言われました。税金はたくさん払っているのにどこにも入れないなんて。その言い方にも腹が立ちました」
など、怒りを露わにする人もいた。
「保育園に入れない」へのヤジ「移住しろ」は的外れ 責めるべきは児童福祉法24条を守れていない基礎自治体
待機児童問題は「保育園落ちたの私だ」という匿名の投稿から徐々に顕在化し、今年もツイッターでは「保育園に入りたい」というハッシュタグが盛んになっている。
児童福祉法24条と「子ども・子育て支援法」では市町村に対し、保護者の労働や疾病などで保育できない場合、認定こども園や家庭的保育事業などで、自治体が必要な保育を提供する義務があると定めている。しかし現状の限りでは、この義務は十分に果たされていない。
ネットでは
「保育園落ちたとか言うなら地方に移住しろ」
「親が仕事の都合(つまり単なるエゴ)で東京周辺に住んでて、それで保育園落ちた文句を日本全体に向けて言うのはお門違い」
といった声もあり、待機児童は東京などの都市部だけの問題と捉える人もいるようだ。確かに、2016年4月時点での東京の待機児童数は8327人と突出しているが、沖縄県で1977人、滋賀県で339人、福島県で398人など、首都圏以外でも発生している。日本全体の問題であり、他人事ではない。
自治体が保育提供義務を果たせていないことが原因であれば、保育園に入れられずに困る保護者を「移住しろ」と責めるのは相応しくない。こうした批判は、ただでさえ育児と仕事の板挟みになっている保護者をいたずらに疲弊させるだけである。
子育てが仕事復帰を阻む、と悩む人が少しでも減るよう、自治体にはこれまで以上に解決策を講じてほしい。