ストロング系飲料なぜ増加? 専門家「企業の業績よくても所得が上がらないため、嗜好品から削っている」
ここ最近、アルコール度数の高い飲料が人気を集めている。キリンビールは1月23日、第三のビールである「のどごし」から「のどごし ストロング」を発売した。サントリーの「頂<いただき>」は昨年7月に度数7%で販売を開始したが、今年2月には度数8%でリニューアルする。
同じくサントリーが販売するチューハイ「ストロングゼロ」シリーズの度数は9%と更に高い。ツイッター上では「飲む福祉」などと言われ、昨年末にNHKが取り上げる事態にも発展した。
月刊「酒文化」の発行や、酒に関するイベントの企画立案などを行う酒文化研究所の山田聡昭さんは、こうしたストロング系飲料が人気を集める背景に経済的な要因があると指摘する。
ストロング系飲料は「1缶で1.5~2本分飲んだくらいの酔いの回り方感じる」
アルコール飲料の全体のトレンドとしては、低アルコール化が続いている。ウィスキーや焼酎、日本酒よりもビールが好まれるようになった後、ビールより度数が低いチューハイやカクテルが登場し、人気を集めた。
チューハイの度数は5%~7%が主流だが、更に低い3%台のチューハイも出ている。こうした流れを受け継ぎつつ、「低アルコール飲料の中で、比較的度数の高い飲料に人気が出てきたのが最近の傾向」だという。
山田さんによると、5~7%の缶チューハイやハイボールを飲んでいた人にとって度数9%のストロング系飲料は「1缶で1.5本~2本分飲んだくらいの酔いの回り方」と感じられる。こうした中、「企業の業績が上がってもさほど所得は上がらず、支出の面ではスマホなど、昔は無かった消費が増えた」現代では、
「自由に使えるお金を調達するために、嗜好品の消費を控えたいという思いがあるのでしょう。ストロング系飲料は度数が低いものと値段は変わらないため、手軽に安くくつろげるところに魅力を感じ、手に取る人が多いのではないかと考えられます」
と分析する。
依存症当事者は「更に高い度数の飲み物に手を出すスパンが短くなる」と危険性指摘
安く酔えるのはメリットでもあるが、気軽に購入できる分、アルコールの摂取量が増えてしまう危険性もある。ストロング系飲料は、日本酒や焼酎などに比べれば度数は低い部類になるため、これらを飲んだからといってすぐに依存症に繋がるわけではない。
ただ、アルコール依存症の自助グループの運営に携わっている男性は「依存症を引き起こす一つのステップになることは確か」だとして、昨今のストロング系飲料人気に警鐘を鳴らす。
「普通のビールでは物足りなくなって20度30度と高い度数を求めていくのが依存症患者です。始めから高めの度数を飲んでいれば、更に高い度数の飲み物に手を出すスパンは短くなるので、危険性が高いことは確かです」
酔いにコスパを求める風潮は収まりそうにない。飲酒量や飲み方には気をつけたいところだ。